▽ 絆 -kizuna- ※03
下に降りる気力もなくて、何度も鳴り続ける携帯をずっと無視してた。
時間が経ってもまた鳴り出す携帯にゆっくり立ち上がり、ノロノロ螺旋の階段を降り、電話に出ると両親からだった。
ルカが家を借りるから、保証人になってくれって思い詰めた感じで来たらしい。
心配だから話を聞いてやってくれと。
けど…もうどうすればいいのかわからない…。電話を切って、部屋に戻んのも怖くて、ソファーにずっと腰掛けてた。
しばらくして目を覚ましたのか、上からお前がフラフラして、手すりにつかまりながら降りてきた。
割れた皿を目に留め、俺を通りすぎ、さっき割った皿をカチャカチャと片付け始めた。
「おい、危ねぇから触んな…」
やめさせようと掴んだ腕に、小さい震えが伝わってくる。
俺と目を合わそうとしない。
黙ったまんまだ。
泣きすぎで、赤く腫れたお前の目から涙が溢れてきて、力無く流れる涙は止まらなくて、手首や、足に自分が乱暴した痕跡が無数にあって、抱きしめたくても怖くて抱きしめてやることが出来なかった。
「…実家送ってくから、用意しろ」
もうそれしか言えなかった。
こんな事になるなら、もっとお前を大事にしてやれば良かった。
あんなに言葉を欲しがるお前に、ウンザリして飽きる位好きだっていってやれば良かった。
お前を信じられなかった俺は、お前に好きだなんていう資格なんかない。
もう離れるしかお前を救ってやれない。
「……荷物…それだけか?」
ここに来た時より少ない荷物を持って、コクりと頷いて車に乗り込む。
送っていったまま、迎えに行く事はもうないんだと最後の道を走らせる。
「…今まで…ありがとう…」
お前の実家に着いて、それだけを言い残し、家の中に入っていく。
部屋の明かりが点いたのを確認して、アクセルを踏んだ。
West Beachに戻ると何もする気が起きなくて、ドサッとソファーに腰掛ける。
いつもなら、お前がいて、ルカがいて、ずっと笑いが絶えなくて、バカみたいに騒いでて、こんな静かな夜なんて一度もなかった…。
こんな日が来るなんて想像した事もなかった。
当たり前の日々が、慣れと甘えの怠慢で、失って初めてどれだけ大切だったか気づくなんて思いもしなかった。
もう…疲れた…。
ダルい体をのそりとあげ、自分の部屋へ向かう。そこは自分が犯した罪がそのままの状態で放置してあった。
ベッドの横の床に腰をおろし、頭をもたげると、お前と過ごした思い出がそこら中にあって。
ゆっくりと目を閉じた。
To be continued…
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