絆 | ナノ


▽  -kizuna- 11


悩み続けて早3日。
どうにかしなくちゃと思いつつもきっかけも掴めない。それどころかサークルに顔を出しても玉緒先輩に会えないでいた。


「玉緒先輩いらっしゃらないんですか...」

「今週は家教のバイトが毎日入ってるって言ってたから生徒さんのテスト終わるまではサークルにも顔出さないかも」

「そう...ですか...」

「何か急ぎの用事?伝えとこうか?」

「いえ、大丈夫です」


フゥっとため息をついて扉をしめる。
どうしてこう会わなきゃ!と思う時に限って中々会えないものなんだろう。
メールで聞けるような内容でもないし会って話したいんだけどなぁ...。
人が多いカフェテリアでも聞にくいし。

バイト先でうわの空になっていたわたしにミヨが話しかけて来る。


「バンビ、どうしたの?」

「んー...。聞きたいことがある人に中々会えないの」

「聞きたい事?」


首を傾げたミヨがショーケースの中を整えてた手を止めて見上げる。


「友達の好きな人が玉緒先輩の友達なんだけど、その人がどんな人なのかわからなくて、どんな人なのか聞いて欲しいって言われたの」

「そんなのバンビが悩むことじゃない」


ピシャリと正論が降ってきて苦笑する。


「そうなんだけど、やっぱり好きな人の事って気になったり不安になったりするから...少しはお手伝いしたいな...って」


立ち上がったミヨが呆れたようにはぁっと息を吐く。


「はぁ、お人好し。だけどそこがバンビのいい所。だから星はちゃんとみてるみたい」

「?」


言われている意味がわからなくて首を傾げるとミヨはフフ、っと口角をあげる。


「ほら」


笑顔のミヨが指した方向には自動ドアをくぐり店内に入ってきた玉緒先輩がいた。


「玉緒先輩!?」

「ん?え、あ、美奈子さん?ここでバイトしてたの?宇賀神さんも」


思わぬ人物の登場にビックリしてショーケース越しに玉緒先輩に近づく。


「はい、玉緒先輩はケーキを買いに来られたんですか?」

「あー...うん、今日姉が帰って来ることになってて母から頼まれてね。ケーキよりも焼き菓子の方がいいかな。来なかった時困るから」

「来なかった時?」


苦笑して焼き菓子を眺めてわたしの方に向き直る。


「気まぐれな人だから。おまかせでセットを作ってもらえる?」

「はい」

「助かるよ」


焼き菓子のセットを作りながらどう切り出そうか思案する。
せっかくなら今日中に聞いてしまいたい。
莉子ちゃんも待ってるだろうし。
焼き菓子セットを作って待ってる玉緒先輩に確認してもらう。


「これでどうでしょうか?」

「うん。ありがとうOKだよ」


微笑んだ玉緒先輩の顔をじーっと見つめる。


「えっと...美奈子さん?僕の顔に何かついてる?」


不思議そうな顔をしてわたしを見つめる玉緒先輩の視線に耐えられずに俯いてしまう。


「え?あ、いえ、すみません!あの...あの...」

「何か言いたそうな顔してるけど」

「その...あの...」


こんな所でどう切り出していいか分からずに戸惑っているとミヨが後ろからひょこっと顔を出した。


「これから時間ありますか?バンビ、あと20分で上ります。よければ待ってて欲しい」

「ん?ああ...僕は構わないけど」

「ミヨ!?」

「バンビ、聞きたいことあるんでしょ?」


ミヨがにっこり笑うと状況を把握した玉緒先輩は優しく微笑んだ。


「そうなんだ。じゃあそこのイートインスペースで待ってるよ。アイスコーヒーを頼んでいいかな?」

「すみません...。急に。でも家庭教師のバイトは大丈夫なんですか?」

「ああ、その帰りなんだ。後は家に帰るだけだから。じゃあそこで待ってるよ」

「は、はい!ありがとうございます」


ペコっと頭を下げると気にしないでという様にヒラヒラと手を振り椅子に腰掛ける。すぐにミヨがアイスコーヒーを持って玉緒先輩の前に提供していた。


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