▽ 絆 -kizuna- 10
「お待たせしました」
「いい買い物できてみたいで良かった」
「はい」
「じゃあ、あっちのカフェで昼食食べようか。この前出来たって評判らしいから」
「え?あ…」
先輩が指差す車道を挟んだ向かいは、この前コウが彼女と入ってカレン達と行きそびれたカフェだった。
「いいかな?サークル合宿の事も話したいし」
「はい」
にっこり微笑んでチクチクする胸を押さえた。
カフェに着いてランチを食べながらも、コウはどこに座ったんだろうとか、何を食べたのかな?とか、ついそんな事ばかり考えてしまっていた。
アイスティーのプカプカ浮かぶ氷をストローでつついたり、クルクル掻き混ぜてうわの空でいた。
「……美奈子さん?聞いてる?」
「え…?」
不意に呼ばれて頭をあげる。
「その様子じゃ聞いてないな?」
「え?んん!?あ!ごめんなさい!サークルの……なんでしたっけ!?」
クスクスと笑われて見つめられて恥ずかしくて視線を落とす。
「わたし、もう…もう!本当にすいません…。もう一度お願いします…」
「もちろん。僕も食事抜きは困るし」
玉緒先輩が説明してたのはサークル合宿での食事の事。
合宿っていうよりはキャンプみたいなもので、通例でテニスコート近くのロッジを借りるらしい。
食事が自分たちでの準備だから毎年女子にお願いしているって事だった。
また改めてみんなが集まった時に計画表をくれるみたいだから、莉子ちゃんにも色々きいてみなくっちゃ。
カフェを出て近くの信号待ちをしながら玉緒先輩に軽く去年の合宿がどんな感じだったのか聞いていると必然と合宿の夕飯の話になった。
「夕飯は何にする予定?」
「うーん…わたし料理あんまり得意な方じゃないので、やっぱりカレーが1番無難なのかなって」
去年もカレーだって言っていたし、満場一致でカレーになりそうな気もする。簡単だし。
「料理得意そうに見えるけどな」
「ちょっと前に始めたばっかりで、まだまだレパートリー少ないんです」
「少なくても作れるんだから凄いよ。僕は作れないし。そうだ!朝は和食をリクエストしてもいいかな?」
「いいですね!お味噌汁!」
「楽しみだな。お、信号変わるね。行こうか」
「はい」
今年の夏はバイト三昧かなって思っていたけど、サークル活動のおかげで少し楽しい夏になりそう。
新設された図書館にも行ってみたいし、海にも行きたい。
楽しいことはきっとたくさんあるはずだもん。
To be Continued…
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