絆 | ナノ


▽  -kizuna- 10


予想以上に面白かったお笑いライブが、会場から出た後もわたし達を笑わせる。


「面白かったぁ!笑い過ぎてお腹が痛いです」

「僕もだ。ああ、また思い出し笑いが…っ」

「ああ!もうっ!笑いがうつっちゃうじゃないですか!」


二人で肩を揺すって笑う姿に周りが不思議そうな目で見てる。けど先輩と目が合うとまた笑いが止まらない。
こんなに笑ったの久しぶりでお腹が筋肉痛になっちゃいそう。


「あー、笑い過ぎてお腹が鍛えられそうだな」

「わたしも思ってました」

「気が合うね」

「はい」


ふーっ、と一息ついて腕時計を確認した玉緒先輩が周囲を見渡す。


「お昼すぎてるね。どこかで何か食べようか」

「そうですね。ちょうどお腹空いて……あ」

「どうしたの?」


横を見ると一度だけコウにくっついて来た事のあるレコードのお店。
今は縁のない店なのに、足がその店の前でどうしても止まって動かなくなった。


「先輩あの、………少しだけ、見て行ってもいいですか?」

「もちろん構わないよ」


店内に足を踏み入れると、リサイクル商品独特のほこりっぽいような何とも言えない匂いがした。
あいかわらず沢山のレコードがひしめき合ってる。
一度しか来たことないけど、コウが探してた場所は覚えてる。

思い出の後ろ姿を追い掛けて、一枚一枚あの時を思い出しながらレコードを見ていく。

コウの部屋にあったEP盤を見つけて自然と口元が緩んだりして、『ああ、ふっ切れるのっていつになるの?』って苦笑しながら、『ここに来てる時点でまだまだ先だよ』って自分でツッコんでみる。

一枚づつめくっていく内に一枚のレコードをみて胸が跳ねた。
これ…コウが探してたやつだ…。
引っ張り出して両手で持ってみる。
誕生日にプレゼントしたくて、探してたけど見つからなくて、誕生日はコウが好きそうなヴィンテージ物をあげただけだった。
喜んでくれたけど、これだったらもっと喜ぶ顔みれたのにな…。
手にとったレコードのジャケットを眺めていると隣から覗き込まれた。


「こういうの好きなんだ」

「あ、はい…。聴いてる内にどんどん好きになっちゃって。これもずっと探してたやつなんです」


聴いてた人をなんて恥ずかしくて言えないけど…。


「そっか、運がいいな君は。こういうのって一期一会だしね。足が止まったのも縁があったんだろうね」


一期一会…か。
そうかも…。


「……わたし買ってきます!」

「ああ、もちろん。じゃあ僕は先に外で待ってるよ」

「はい」


レジでお財布出しながら、あれ?ウエア買えばいいんじゃないの?って一瞬思ったけど、フルフル頭を振って考えを振り払った。


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