▽ 絆 -kizuna- 10
待ち合わせの日、少し早めに出たのに待ち合わせの場所にはすでに先輩がいて、慌てて駆け出した。
「す、すみませんっ」
「ん?どうしたの?」
「お待たせっ、しちゃってっ」
ゼェゼェと上がった息を整えながら見上げると先輩が笑い出した。
「ああ、ごめん。僕が早く来過ぎただけで、美奈子さん時間通りだよ。そういえば前もこんな事あったなぁ」
「そうでしたっけ!?」
「うん。あの時も君は僕を見つけて慌てて走ってきたよ」
「じゃあ、わたし先輩を待たせてばっかりって事になります…」
ああ、もう!わたし最悪だ。
よりにもよって先輩を待たせたくせに覚えてないとか…。
申し訳なくなってしょんぼりしてると慌てた様にフォローが入った。
「ごめんごめん!嫌味とかじゃないからね?待つのは嫌いじゃないんだ。こうやって慌てた顔見れたりするだろう?」
「えぇ!?」
「ほら、その顔」
クスクス笑う先輩を真ん丸な目をして凝視した。
やっぱり今まで知ってた先輩とどこか違う気がする。
高校時代も落ち着いて大人っぽかったけど、今はちょっとそれに大人の余裕?って言うのが感じられる。
「な、なんか……先輩って前と感じ変わった気がします」
「そう?ダメかな」
「ううん!今の方が親しみやすいです!」
「はは、君がそう言ってくれるなら良かったな…、だって僕は…」
先輩を見上げると少し言葉を溜めた後、頭を振って微笑んだ。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもないよ。行こうか」
「はい!」
少し後ろを歩いてキョロキョロと周りを見渡す。
久しぶりのお出かけだしいっぱい楽しまなきゃ!
隣を歩くようにうながされて横に並び歩き出した。
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