▽ 絆 -kizuna- 10
だけどすぐにきたのは新歓コンパ。
確かに大学生っぽいけど、こういうのは初めてで、男の人が話しかけてくるのがちょっと怖い。
お手洗いに逃げ出して、ゆっくりメイク直しをしながら時間をつぶす。
扉が開いた方をみると、莉子ちゃんがわたしを見つけて嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ここに居たんだ!ここのサークルイケメン多いよね」
「うん。カッコイイ人多い」
本当はあんまり周りを見る余裕がなくて、せっかく自己紹介があったのに、名前も顔も全く覚えてない。
それどころか緊張しすぎて、自分が何を喋ったのかさえ覚えてない…。
そんなわたしとは対象的に魅力的な自己紹介をしてた莉子ちゃんは興奮気味に宣言した。
「だけどやっぱ周防さん狙い!すっごいタイプ!彼女いないらしいし、ここは何が何でも彼女になりたい!彼女になる!」
「なんとなくそうなのかなとは思ってたけど玉緒先輩は?」
「紺野先輩?なんで?」
「ほら、前にカフェテリアで紹介してって言ってなかった?」
「ああ〜!紺野先輩もかっこいいけど、世界が違う人みたいなんだよね〜。目の保養とかアイドルと同じ感覚。今は俄然、周防先輩!」
「そうなんだ」
「美奈子ちゃんは彼氏いないの?」
「うん」
「そうだったんだぁ。居るのかなってずっと思ってた。もっとおしゃべりしたいなーって思ってたんだけど、一目散に帰っちゃうし」
「そっかごめんね」
確かにコウと付き合ってた時は早く会いたくて講義が終わったらすぐ帰っちゃってたな。
そんなんじゃ仲良しの友達もできなくて当たり前かぁ…。
ホント周りみえてなかったな…。
「ううん!今は話せて楽しいよ!美奈子ちゃんは彼氏欲しくないの?」
「うん…。いらない」
「そっかー。あ〜アタシは早く彼氏欲しい!今欲しいすぐ欲しい!」
「ふふ、周防先輩と上手くいくといいね!」
お化粧を念入りに直して、最後にグロスをツヤツヤのせた莉子ちゃんが鏡越しにわたしをみてかわいく微笑んだ。
「うん!頑張るよ!だから協力してね!じゃあいっくね〜!隣取られたらヤだから!」
「わかった!頑張って」
後ろ姿を見送り簡単に髪を直して鏡の中の自分を見つめる。
ふぅっと大きく一息ついてトイレのドアを開けた。
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