絆 | ナノ


▽  -kizuna- 10


わたしはあいかわらず大学かバイトで、変わらない繰り返しの日々。このまま大学生活が終わっちゃうとさびしい。
思い描いていた大学生活のきっかけをくれたのは玉緒先輩だった。


「よければ君達テニスサークルにはいらない?」


一緒にランチを取る約束を、律儀に守ってくれている玉緒先輩の突然の勧誘。
隣にいた莉子ちゃんと顔を見合わせる。


「んん?テニスサークルってなんですかぁ?」

「あれ?玉緒先輩ってボランティアサークルじゃ…?」

「ああ、ボランティアもだけど、テニスサークルにも入ってるんだ。僕の話を聞いて興味があればどうかなって?」


玉緒先輩がテニスサークル??
運動のイメージがあまりなくて、失礼ながら頭にハテナがいっぱい浮かんだ。
話を聞いてみるとテニスサークルなのに、色んな所にキャンプに行ったりもするし、冬はスキーにも行ったりするらしい。
体を動かすのは好きだし楽しそう。


「楽しそうかも〜。ね?美奈子ちゃん」

「うん。楽しそう!」

「そういってくれると助かるな」

「助かる?」

「お!紺野!さっそく可愛い子達に声かけてるな」


後ろから声がして玉緒先輩が手を上げた。
振り返ると、かっこいい男の人がニッコリと微笑んでいて、隣に座っていた莉子ちゃんは目をキラキラクリクリさせた。


「彼も一緒にいいかな?」

「是非!」


莉子ちゃんが間髪入れずに答えて先輩が微笑んだ。


「周防、こっち空いてる」

「お!それじゃあお邪魔しまーす」


席に促された『周防』先輩が莉子ちゃんの正面に座った。
隣を見るとうっとり見つめてる。
あれ?これってもしかして…?


「どぞー!」

「こんにちは」

「周防です。よろしく」

「彼もテニスサークルだよ」


話の流れからそんな気はしてたけどそうなんだ。


「ほんとに!?実はアタシ高校時代テニス部なんです〜!」


まさかの経験者出現に3人で驚く。


「そうなんだ!いいなぁ。それならテニスサークルぴったりだね!」

「いいね!経験者!ますます大歓迎!」

「ははっ。経験者は心強いな」


楽しそうに盛り上がる場の空気につられてわたしもニコニコしちゃう。


「よし!アタシ入ります!き〜まり!美奈子ちゃんも入るよね?」

「わたしはテニスした事ないよ?」

「未経験でも全く問題ないよ。大歓迎。な?周防」

「もちろん。みんなワイワイ楽しくがモットーだしな」


少しの不安を見透かされたのか、先輩二人が『大丈夫』を繰り返した。
そうだよね玉緒先輩もいるし、莉子ちゃんもいるし。
新しい事にも挑戦してみたい。


「うん!じゃあよろしくお願いします」


ペコリと頭を下げて入部を決める。


「歓迎するよ」

「よっしゃ!新入部員げっとー!」

「楽しみだね美奈子ちゃん」

「うん!」


成り行きで決まったサークル。
これで少しは大学生らしくなるかもしれない。


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