▽ 絆 -kizuna- ※07
「ねぇねぇ、ヤスが言ってたけど、コウってバイク好きなの?」
数人で盛り上がってる輪から外れていた俺の隣にいつのまにか派手な感じの女が座っていた。
「あぁ?」
「バイク!バイク乗るんでしょ?」
「気安く呼び捨てしてんじゃねぇよ」
美奈子と同じ呼び方をしてくる事がイラつく。
なんで初対面の女に馴れ馴れしく呼び捨てされなきゃいけねぇんだよ。
無視してタバコに火をつけ、空っぽになったソフトパッケージを握り潰した。
「いいじゃん仲良くなりたいし。それよりさ、今度バイク乗せてよ。あたしそーゆーの好きなんだよね!」
「はぁ?」
なんだこの女。馴れ馴れしいにも程があんだろ。お前の好き嫌い聞いてねぇよ。
「彼女いないの?」
質問に答えたくなくて携帯を触っていると、ベッタリくっつかれ画面を覗き込まれる。
「へぇ、待ち受け彼女なんだ。見かけによらず以外〜」
「うるせぇな。離れろ」
腕を払い距離を取った。
ルカと美奈子が面白がって俺の待ち受けを勝手に変えて、その後、変え方もわかんねぇでそのまんまになってる。
つき合ってる時は別に誰かに見られる事もなかったし、美奈子が嬉しそうにしてっから、慣れちまえばこれでもいいと思っていた。
それを今、関係ねぇやつに見られるとかマジ笑えねぇ。
「彼女いるんだ?」
「どうでもいいだろ」
女が居ようが居まいがこの女にゃ関係ねぇし、とにかくうっとおしい。
ヤスの方を睨んで見ても、親指を立てられただけで何の解決にもなりゃしねぇ。
意味わかんねぇだろその指!バカヤスが…!
伝わらない事に舌打ちする。
役目も果たした。
もういいだろうと何も言わず立ち上がり便所に向かう。手を洗っているとさっきの女が入ってきた。
「さっきからなんなんだよテメェ」
「いいからこっちきて」
「はぁ?いいわけ………って、ンだよ!?」
引っ張られて便所の少し広めの作りの個室に押し込められ後ろ手で鍵をかけられる。
「彼女だけじゃ飽きるでしょ?」
飽きる?
そこでようやく意味がわかった。
お誘いって訳か。
そういやあれ以来自分でも抜いてもねぇな。
美奈子はカイチョーとヨロシクやってんのによ。
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