絆 | ナノ

▽  -kizuna- ※07


チッと思わず舌打ちして眉間にシワを寄せる。
俺を避ける様な人の波にもイラつき、周囲を睨みつけながら歩いていた時だった。


「あー!琥一さん!」

「あぁ!?」


呼ばれた方を振り返るとこの前引っ越しを手伝わせたヤスがヘラヘラ顔して駆け寄ってきた。


嫌な予感しかしねぇ。マジで。


「凶悪過ぎっす!その顔!周りビビらせてどうすんですか」

「うっせぇな。ぶっ飛ばすぞテメェ」

「まぁまぁ!丁度よかった!今から女の子達と遊ぶんスけど、野郎の人数足りないんで来て下さいよ!」

「はぁ?行くわけねぇだろ」

「お願いしますよ!途中抜けても構わないし、彼女にも黙ってますって!」

「行かねぇっつってんだろ!」


無視して立ち去ろうとすると拝みながら正面に回り込まれる。


「引っ越し手伝ったじゃないっすか!あん時なんか困った事あったら言えっつったでしょ!困ってます!ああー困ったな〜!俺困ってるな〜!ほら!今すんげー困ってますよ!見捨てるんすか!?」


必死な形相をギロリと睨んでやっても、全くビビらせ効果はなかった。
こいつは飄々として受け流しが上手い。だから何が何でも意見を押し通してくる。こうなっちまうとこれ以上のやり取りがめんどうくせぇ。


「……チッ、行きゃいいんだろうが!」

「いや〜!来てくれるって信じてましたよ!」

「すぐ帰っからな」

「うっす!」


押し切られて人生初の合コンとか言うチャラいモンに参加するハメになった。



連れてこられた店で一番壁際の隅を陣取った。
こういう集まり自体来た事もねぇし、愛想よくもするつもりもねぇ…というか出来ねぇ。
話を聞きゃあヤスが一人の女と知り合いなだけで、あとは全く知らねぇモン同士らしい。
よくもまぁあんだけ話が盛り上がるもんだ。


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