絆 | ナノ

▽  -kizuna- ※07


……何だよ。
心配なんて無駄だったって事かよ。
あんな目にあったってぇのに女ってやつは、次に男ができりゃすぐそういう事が出来るって事か?マジで意味わかんねぇ。

美奈子が他の野郎とナニすんのを想像するだけで胸糞悪い。しかもあの日の事が脳裏を掠めじんわり汗が滲む。


楽しげな声に強烈な嫉妬心が襲う。思わず飛び出してぶん殴りそうになる気持ちを抑えて拳を握った。

どうしてそんなに見る目がねぇんだ。
いくらなんでも早すぎだ。そんな男にはロクな奴いねぇだろ。
俺みてぇによ。

自分でツッこんで軽く落ち込んだ。信号の色が変わり人が流れ出した方向をみる。
横断歩道を渡る親しげな男には見覚えがあった。
顔と名前がすぐに一致しなくて記憶の引き出しを次々引っ張り出してハッとなる。

眼鏡こそ外して雰囲気も若干明るくなってっけど間違いねぇ。カイチョーだ……。


『勝てない』


いやそもそも俺はもう同じ土俵にすら上がれねぇ。
俺とは真逆の男…。前言撤回でそりゃ正解だ。
見る目がマトモになってやがる。
クッ、と笑うと力が抜けた。





ほらみろ、やっぱり最悪だ、最悪だ!
狭い路地から見上げた狭い空はムカつく位青かった。




ブラブラすんのなんてやめだ。
家に帰ろうとUターンして、車までの道を足早でイライラしながら歩く。


女々しいなんて事は重々承知だ。
どんなに忙しくしていても、ふとしたきっかけで美奈子は俺の心を占拠する。


美奈子が好きだった曲。
美奈子が好きなくいもん。
美奈子が好きだったテレビ番組。
美奈子が好きだった…きっかけを数え上げりゃキリがねぇ。


目を合わせてもらえなかったあの日、掴んだ手を離さざるを得なかった。手を離せばこんな日が来るのはわかっていたつもりだった。

………けどよ、あんま早すぎだろ。
男作ってもう泊まりなんてよダメージがデカすぎだ。

あン時の事がトラウマで男がダメになっちまって、他の誰のモノにもなんねぇんじゃねぇかとか、憎まれながらでもアイツの記憶に残りてぇとか、最低な事考えてた罰か。

カイチョーなら間違いなく美奈子を幸せにしてくれる。俺とは真逆で美奈子が欲しがる言葉を照れずに言うに決まってる。人前でだって手も繋ぐだろう。

頭の出来もよくて釣り合いも取れてる。男から見たってスゲェ男だって認めざるを得ない。それこそ俺とはちげぇエリート様だ。

そもそも美奈子みたいな上等な女が俺なんかとつき合ってたのが不思議なくれぇだしよ。これでいい。



ただまだ、幸せになってくれと思っても心がついていかない。


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