絆 | ナノ


▽  -kizuna- 09


少しの体の重みと軽い腹痛と頭痛。
そしてこの時にいつも味わうよくわからない鬱々とした気持ち…。それは毎月決まった周期で体感してる。
アナスタシアのバイトを終え、自宅に戻りトイレに入った時ティッシュについた血液にホッとした。


「………あ、やっと始まった…」


毎月順調に規則的に来ていた生理があの後は予定を過ぎても全く来なくて不安で仕方がなかった。
体外に血液が排出されると、やっと体が少しは綺麗になった気がした。


それなのに心の奥底のこの気持ちはなんだろう…。
前を向くと決めたのに、一人になるとどうしても寂しさが襲ってくる。何だか少し寒い気すらしてきてバスルームで熱めのシャワーを浴びる事にした。


もし妊娠してたらどうなってたんだろう。
コウは…どうしたのかな…?
わたしは…どうしたのかな…?
……ルカは…どうしたのかな…?


『もし』をたくさん考えた。自分に都合のいい『もし』じゃなくて、起こりえなかった最悪の『もし』だけを考えた。
それにホッとして無理矢理自分を納得させる。そうでもしないと自分に都合のいい事ばかりが頭に過ぎってしまうからわたしは振り払うように頭をふった。

汚れた体は心まで汚していくのかな…?
こんな女フラれちゃって当然だよね…。
忘れなきゃ、忘れなきゃダメなのに…!

納得しない心に考えるのを止め、何度も何度も体を洗い泡を洗い流して足元をみると、血液がうっすらと足を伝ってた。
ぞく、っと背筋が粟立ち慌ててもう一度体を洗う。
降り注ぐ熱いシャワーよりも熱い涙が溢れてわたしはまた思い出して泣いてしまった。


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