▽ 絆 -kizuna- 09
混乱してるようにみえるカレンの『とりあえずカフェ行こっか』に頷いてみたけど、運が悪い事に目的のカフェへ2人が入ってしまい、偶然にならない鉢合わせをするわけにもいかず、お泊りする予定のカレンのマンションに早めに向かう事になった。
カレンは普段と同じ態度で接してくれる。
今日だけは無礼講って事で、ハイカロリーのデリバリーピザを頼んで、カレンに着せ替え人形されて、あの頃みたいに色んな話をしたけれど、恋バナだけは出なかった。
気を遣わせてしまっている事が心苦しかった。
カレン曰く美容の為の早めの消灯だったけど、寝れなくてお布団を抜け出してベランダに出た。
夜の風は階層が高いせいか夏なのに冷たい。
まだまだ街は眠ってなくて、マンションの下はキラキラしてる。夜空を見上げても逆に星は見えない。それでも星を探してみてた。
流れ星が流れないかなぁなんてちょっぴり考えた。
ほんとに3回お願い出来て望みが叶うならいくらでもお願いするのに…。
「眠れない?」
不意打ちの声にびく、っと跳ね上がったけど、振り返りシュン、と肩を竦めてみせる。
「あ、ごめん…起こしちゃった?」
「ううん、まだ寝てなーい。はい、カモミールティー」
カレンがマグカップを渡してくれて、外に置いてある乙女チックなテーブルセットのチェアに腰掛けた。
「ありがとう」
「ミヨは眠くないって言いながらすーぐ寝ちゃったけどね」
「ふふ、高校の時もだったよね」
「ほーんと。寝付きの早さが凄いんだから」
カレンも色違いのマグに口をつけてふーっと一息ついた。
「バンビ…あのさ」
「……なぁに?」
コウの事を聞かれちゃうんだろうなと覚悟を決める。
わたしが逆の立場だったらこんな中途半端なのヤだもん。なんでもハッキリさせるカレンならなおさらだ。
「コーイチくんの事、それでいいの?」
空を見上げていたカレンがこっちをジッと見つめて呟いた。
「…………終わっちゃった事だから」
「まだ好きなんでしょ?」
「…………うん」
大好きだよ。
今でも。
だけど早く…忘れなきゃいけない…。新しい彼女出来てたみたいだし。
……………切り替え早過ぎだよ。
嫉妬心が沸き上がって来るのを必死で押さえた。そんな権利なんてないってわかってる。だけど、ちょっぴり泣きそうになった。
カレンがいる前では泣けなくてグッと我慢して、悲しい気持ちをカモミールティーと一緒に飲み込んだ。
「許してくれなかった?」
「うん…」
「はぁ、コーイチくんもちっちゃいなぁ…」
「自業自得だから!もう早く忘れなきゃ!ほら、彼、女…出来たみたいだし…!」
「友達かもよ?」
わたしが知ってる限り男の子はコウを慕って周りにいっぱいいたけど、女の子はコウを怖がって近づかなかった…。
だからわたしはすごく安心してたんだ。
自分だけが優しいコウの事知ってるって…。
特別だって…。
なのに…。
「親しげ…だったし…」
「あれくらいつき合ってなくてもするって」
コウの性格からしてそれは絶対ない。
「ううん、いいの!早く忘れて次の人見つけなきゃ!」
本当は見つけるどころかあんなに誰かを好きになんてなれない。
だけどカレンにこれ以上心配させたくなくて『平気だよ』って笑顔をみせると、カレンは暗くならないようにわたしに合わせて笑ってくれた。
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