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▽ いつか、君と


最近寒かったせいだろう。
僕の『彼女』が風邪をひいてしまった。
今日は僕の家で勉強デートの予定を立てていたけどもちろん美奈子さんは来られない。
お見舞いに変更して僕が美奈子さんの家に行く事にした。
ちゃんと食べているか心配だし、せめてお粥でも作ってあげたい。彼女程料理は出来ないけれど、コートを着たまま僕でも作れる簡単なレシピを検索していた。

「あれ?出かけるの?今日は、美奈子ちゃんが来るって言ってなかった?」

開け放した扉の向こうから姉が顔を出して話しかけてきた。

「その予定だったんだけど、風邪が治らないみたいだから今からお見舞いに行くんだ」
「ふーん。あの、たまご酒とか…いいと思う。体温まるし」
「ああ、いいね。母さんに作り方聞いてからお見舞いに行ってくるよ」

僕はパソコンの電源を落としてバッグにペンケースとレポートを入れた。お見舞い帰りにでも図書館で調べ物をしてレポートをしよう。

「玉緒…美奈子ちゃん弱ってるのにつけ込んで変な事しない?」
「なっ、病人にそんな事するわけないだろ!」
「変な事って具体的になあに?」
「……なにっ、て!急いでるんだ行ってくる!」

ニヤニヤする姉から逃げる様に自宅を出て、美奈子さんの家へ足早に向かう。
変な事なんてする訳ないじゃないか!病気で寝込んでいるのに!
そもそも僕は美奈子さんとまだそんな関係になってないし…っていやいや!なっていたって病気の美奈子さんにそんな非道な事出来るわけないだろ!?

それは確かに僕だって興味が無いわけじゃない。
だけど美奈子さんが大事だから、美奈子さんの心の準備が出来るまでいつまででも待つつもりだし…。
悶々と考えて歩いているとハタとスーパーが目に止まる。

ああ、そうだ。
食材買っていかなきゃ。危うく手ぶらで美奈子さんの家まで行くところだった。ピタリと足を止めスーパーの自動ドアへ方向転換した。
お粥の材料と喉越しのいいものや簡単に食べられそうな物を数点選ぶ。必要そうなものも見繕い会計を済まして美奈子さんの家に向かった。
美奈子さんの家に着きインターホンを押すとしばらくして「はい」と少し掠れた声が返ってきた。


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