series | ナノ

▽ 設楽


海外から帰国して何を振り切ってでも、1番に会いに来てやったのに、紺野と一緒に初詣に行っただと?
神社へ車を向かわせると、すぐに二人の姿に出くわした


紺野…


「あ、聖司先輩!おめでとうございます!海外に行ってたんじゃ…?」

「忙しい間を縫って来てやったんだ」

「どうせまた、我が儘を言ったんだろう?」


我が儘って何だ?
俺の行動に我が儘何てひとつもない


「会えて嬉しいです」


本当だろうな?だが、俺とは違う意味なんだろう?
それも今だけだ
我慢して、喜びそうなセリフを言ってやってもいい


「ま、ま、まぁ、お前の為なら…来てやっても…いい…」

「はい?何ですか?」


ちゃんと聞いとけよ
それとも何だ?
わざとじゃないだろうな…
ああ…もう…、言ってやらなきゃ良かった


「何でもない」

「僕達今から、初詣に行くんだけど、設楽は忙しいよね?」

「いや、俺も行く」


晴れ着か…
ちゃんとそういうとこに気配り出来るのが、す、す、好きなんだけどな


「行こうか」


割って入って来た紺野に少しイラついた


「はい!」

「帰っていいぞ」

「僕も必死だからね」

「何がですか?」


よりにもよって、ライバルが紺野
手ごわいな
正直腹の底が読めない


「受験の合格祈願しなきゃね、美奈子さんなら安心だけど」

「玉緒先輩が勉強見てくれるからですよ」


今聞き捨てならない台詞が聞こえた気がした


「…勉強見てもらってるのか?」

「玉緒先輩の教え方がすごくわかりやすいんです」


どこで習ってるんだ?
図書館か?
大学か?
ちゃんと公共施設とやらとなんだろうな?
そんな訳ないだろう!?
家に連れ込んでるのか…!?
だいたい勉強なんかしなくても、ずっと俺の側に居て、ピアノを聴いてればいいんだ
ただ、俺の側で!


「俺とフランスにくればいいだろ、受験受けなくてもいい」

「旅行か〜行きたいですね」

「ちがっ…!」


どこまで鈍感なんだお前は!
ため息ついて顔を見つめ、想いに耽る
せめていつも会える距離に居られれば
メールを打つのが苦手だと言えば、何の疑いもなく電話をかけられる
それはいい口実だと思っていたのに、余計に会いたくなるんだ、この俺が
声を聞いてて会えないのがもどかしい


「あ、神社見えて来ましたね!」


真ん中に挟んで歩いて居たのに、お前が小走りで神社に向かったせいで、俺の隣には紺野
不服だ


「俺は欲しいモノは手に入れるんだ」

「それは美奈子さんが決める事だよ」


近くに居るからって、調子に乗るなよ…
美奈子の背中を追って、足を速めれば全く一緒の速度
何でだ!


「聖司先輩、ピアノたまには聴きたいです」


お前が望むなら、この先いくらでも聴かせてやるのに


「今日は時間があるから、うちに来い、好きなだけ聴かせてやる」

「じゃあ、僕もお邪魔しようかな」


何のつもりだ…?
本当に邪魔だ


「呼んでない」

「美奈子さん、僕も設楽のピアノを聴きたいんだけど、招待してくれないんだ」


中々卑怯な手を使ってくるな紺野


「え?何でですか?」


美奈子と二人きりになりたい
屋敷には絶対入れん


「ほぅ?珍しいな、お前がピアノに興味あるなんて知らなかった」

「やっぱり仲良しなんですね!」

「ええっ?」
「どこがだ!」

「だって、二人とも久しぶりに会えたから、お話も弾んでますし、仲良しさんです」


どこをどうすれば、俺がコイツと仲良しなんだ?
バカか!?
お前はバカなのか!?
見て、聞いてわからないのか!?


「こうやって3人で会えるの久しぶりだし、凄く嬉しいです」

「そうかな?」

「俺は、二人がいい」


ハッキリ言ってやる


「わたし…、邪魔ですか?」


どこまで…鈍感なんだ!?
今、俺はハッキリ言った!
話の流れから言っても、紺野を呼ばないと言っただろ!?
どうしてそうなるんだ!!


「違う!俺は…お前と…!ああっ、もう何なんだお前は!」

「あはは!すごいな君は」

「え?え?何ですか!?」

「笑うな!」

「だって!あははっ!」


何で俺が大笑いされなきゃいけないんだ!
一言文句言おうと、顔を見ると不思議そうに、キョトンとした顔されて、また…何も言えなくなる

だけど今年こそはお前を俺の側に


end


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