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▽ いつか、君と


次の日


「…………ん」

見慣れた景色じゃないことに気がついて一気に目が覚める。いつの間にか僕の肩に毛布がかけてあり、腕時計をみると朝の7時を回っている。
この状況からして美奈子さんの家に泊まってしまった事になるんだろう。
はぁ……何をやっているんだ僕は。
帰ったら勘違いした姉さんに突っつかれる事を覚悟しておかなくては。
ふと気がつくと部屋の中に美味しそうな匂いが漂っている。
キッチンの方に向かうと美奈子さんが朝食を作っている所だった。

「おはよう」
「おはようございます。玉緒さん」

少し長い髪を後ろで1つに束ね、可愛らしいエプロンを身につけた美奈子さんが振り向いて僕にほほ笑みかける。

「ごめん。夜の内に帰るつもりだったんだけど。熱は?」
「いえ、起きたら玉緒さんが居て、わたし凄く嬉しかったんです。熱も下がりましたし、ほら、朝ごはんもあと少しで出来るので座って待ってて下さいね」

美奈子さんがこれ以上僕に謝らせないようだろう矢継ぎ早に言葉を並べる。僕は彼女の額に手を当てて熱が下がっている事を確認してほっとした。

「手伝うよ」
「はい。ありがとうございます」

美奈子さんの横にたってお椀に味噌汁を注ぎ隣を盗み見ると、美奈子さんが綺麗に焼けた卵焼きに包丁を入れていた。

「風邪はもう平気なの?」
「はい。玉緒さんのおかげですね」
「僕は何もしてないよ」
「居てくれるだけでいいんです」

僕を見上げて、ふふっと優しく微笑む美奈子さんがとても愛おしい。

「風邪も治った事だし、今度の連休にでも旅行に行こうか」
「本当ですか!?」
「もちろん。僕も君と一緒に居たいしね」
「はい」

美奈子さんは嬉しそうに返事をして、出来上がった朝食を2人がけのダイニングテーブルに並べて向かい合ってすわる。
どこに行こうかと朝食を食べながら2人で思案する。

「あ、そうだ美奈子さん」
「はい」
「僕の前以外の飲酒は出来るだけ控える事」
「ごめんなさい…」

しょんぼりした美奈子さんが俯いた。手を握るとおずおずと美奈子さんが顔をあげる。

「怒っている訳では無くて…、その…君のあんな色っぽい姿…他の男に見せたくないんだ」
「え、あっ…」

少し赤くなってしまった顔を見られたくなくて手で覆い隠そうと握った手を離そうとすると美奈子さんがその上から手を重ねた。

「……玉緒さんにしか…見せません」
「うん。なんだか情けないな、僕は」
「そんな事ないです。玉緒さん、大好きです」
「僕も好きだよ。美奈子さん」

少し頬を染めた美奈子さんが僕をじっと見つめ両目を閉じる。僕は美奈子さんの唇へ優しく口付けた。

「早く、旅行に行きたいな」
「僕もだよ」

もう一度口づけて願わくばその日が明日ならいいのに…なんて僕は思ってる。


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