▽ 最後のドライブデート
ニーナと一緒に暮らす様になって、約一ヶ月が過ぎた
怖いくらい普通の日常を送ってる
あのダラけていた日々も、ジャージで過ごしてたお休みも、ちゃんと起きて、カーテンを開け、日の光りを浴びて、のんびり2人で朝食
特に何をするわけでもないのに、週末は2人で出掛けてばっかり
近場の公園、天草でイルカ、球磨川でラフティング、人吉でのんびりSL乗ってみたり
休みの日に家にいるのが、もったいなくて、外に出るのがクセになってた
その反面、今のままではいけないんだと、心のどこかではわかっていた
「…ねぇ、旬平くん」
「何ー?」
朝食のポタージュが入った、スープカップをコトッとニーナの前に置いて、目の前のイスに腰掛け、コーヒーに口をつけ、意を決してニーナに問い掛ける
「家に…、帰りたいと思う?」
「…何て答えて欲しい?」
予想外の答えにコーヒーカップを、持ったまま固まってしまった
「どういう…事?」
「オレさ、ここは未来だと思ってた」
「未来…?」
「うん、大人なオレがいるんだと思ってたし?未来の自分に会うのも面白れーかもって思った。だけど、ここはオレの世界じゃなくね…?」
すぐに『うん』とは言い出せなかった
夢が…終わってしまう
あんな質問するんじゃなかった
「すぐ否定しねぇって、やっぱマジなんじゃん!」
「…知ってるのかと…、思ってた」
「オレ、始めは夢なんかなとか思ってた」
わたしなんか、まだ夢をみてるみたいなのに
「わたしもだよ…」
「だって、アンタ変だし?面倒臭がりだし?」
「変って…」
ハッキリ言わないでよ!
自分でもわかってるわよ!
「うん、だってマジ変だし、面倒臭さがり屋さんだし、美奈子ちゃんらしくねぇ!って思っても、あっ!やっぱり美奈子ちゃんだって思うし、何気に居心地いいしさ〜」
凄く嬉しかったけど『ずっとココに居て』とは口に出せなかった
1/5
[ × | back | → ]