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▽ ピンクのシャーペン #name1#side


好きな人の持ち物って真似したくなる。
お揃いって凄く特別で嬉しくなる。

部活前、部室の机でニーナが予習してて、ノートにサラサラ問題解いていた。目に止まったのはニーナの指でクルクル回されてるピンクのシャーペン。かわいいな。
あれってわたしが持ってても変じゃないよね?こっそりお揃いにしたりなんかして…。
そんな事考えてるわたしをよそにニーナはシャーペンを回しては止め、書いては回してを繰り返して次々問題を解いていく。


「予習?」
「そうそう。だってさーあらっさん容赦ねぇじゃん?帰って予習する力ものこってねぇの」
「そっか。嵐くん張り切ってるもんね」
「パネェよ。マジで。さ、てと行きますか」


今日のノルマらしき問題解いたニーナはぐーっと背伸びをして嵐さんに話しかける。今度はすっかり部活モードに切り替わったみたい。
問題集の上に置かれたペンケースから覗くピンクのシャーペンをこっそり盗み見る。

やっぱりお揃い…欲しいな。

どうしても欲しくなって部活帰りに文具屋さんに立ち寄る。『オススメ!』のPOPの下にお揃いのピンクのシャーペン。嬉しくなってすぐにレジで会計を済ませた。
気づくかな?気づかないかな?気づいて欲しいな。ダメ、やっぱり恥ずかしい。
買ったばかりのシャーペンをきゅうっと握りしめた。

ある日の気持ちいい放課後、部活前に日直の日誌を書いてた。ニーナの真似をしてシャーペンをクルクル回そうとするけれどわたしには無理みたい。
すっかりお気に入りになったこっそりお揃いのピンクのシャーペン。ニーナは今日も使ってるのかな?

窓の外を見上げると優しい日差しが包み込む。日誌を書いていてもぽかぽかいい天気が眠りに誘う。
風も凄く気持ちよくてまぶたが重くなってくる。
あと少しで日誌は完成なのに眠気に抗えない…。
少しだけ…少しだ、け…。そう思って閉じた目がわたしの意識を奪っていった。

ニーナに『美奈子ちゃん』って呼ばれる夢を見た。『センパイ』とか『美奈子さん』ってしか呼ばれた事ないのにそんな風に呼んでくれたら距離が近づいた気がして嬉しい。凄く、いい夢。目覚めたくないな。わたしも『旬平くん』って呼んで、手も繋ぎたい…。意識が次第にハッキリしてきて夢と現実の境目がぱっくり割れだす。あ、ヤダヤダ目が…覚めちゃう…。


現実に徐々に引き戻され、ゆっくり目を開けると目の前にニーナが居た。

「え…、ニー…ナ?」

夢?あれ?わたしまだ夢みてる?
ぼんやりした意識がハッキリしてくる。

「おはよ。寝すぎ、アンタ」

うそ、夢じゃない。
呆れたような顔をしたニーナがわたしをみつめてる。

「や、ヤダ!来てたなら起こしてよ〜!」

顔に変な形ついてない!?わたし、変な寝言言ってない!?ヤダヤダ!髪の毛くしゃくしゃになってる!!慌てて手ぐして整えてはっと気づく。
どうしよう!お揃いのピンクのシャーペンこっそり使ってるの気づかれた!?

「ほーら、いこーぜ。」
「ま、まって!」

立ち上がったニーナの表情は見えないけど良かった。気づいてない?変な事言ってたらニーナなら絶対つっこんでくるよね!?
ホッと胸を撫で下ろして中途半端な日誌を慌てて完成させようとシャーペンを握った。
あれ?なんか持ち心地違うような…?
少しだけの違和感を覚えたけど、気にせず急いで日誌を完成させる。
ペンケースに大事なピンクのシャーペンをしまってニーナの元へ駆け出した。
教室の入口でわたしを待って振り返る姿に一緒のクラスみたいだななんて少し嬉しくなる。


いつか『スキ』が届いて『旬平くん』って呼べたらいいな。



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