表*部屋 | ナノ

▽ ピンクのシャーペン ニーナside


「せーんぱい!部活いこー…ぜ…」

誘いに行った美奈子さんのクラスで目に飛び込んで来たのは窓際で寝てるアンタ。
ポカポカ気持ちよさそうに爆睡ですか?
まぁ、眠たくなる気持ちはわかるけど。

「もしもーし。ニーナくんですよー?」

近づいて隣に立っても起きる気配全く無し。
揺り起こそうとした手を止めて美奈子さんの前の席のイスを引き、またがって背もたれで頬杖をついた。
窓の外を見るとオレのクラスとは1階分違う景色。
なんか変な感じ。これがアンタとの差なのかな。
視線を戻してみると、風が柔らかく吹いていて美奈子さんのピンクブラウンの髪を撫でる。
サラサラと揺れる髪が光でピカピカしてる。

マジで天使みてぇ。
まつ毛長いな…。
色すげぇ白い…。
唇プルプルじゃん…。

いつもならこんなにマジマジと見れねぇし、もう少しだけ見つめてたい。遠くでどっかの部が活動してる声が響いてる。オレも行かなきゃって思うのにアンタを起こせない。
同じクラスになってこうやって放課後過ごしたかったな。

「せーんぱい。美奈子さーん…。…………美奈子、ちゃん…」

ムリムリムリムリ!
絶対呼べねぇって!
はぁぁ…って大きく息を吐いて机に広げられた日誌に視線を落とすと、アンタらしい几帳面な綺麗な字が並んでる。だけど書きかけの途中からはミミズが這ってるみたいな字になってた。
なるほど。ここで睡魔に襲われた訳ね。
シャーペンを握っていた手はペンを握っていた状態のまま止まってて、オレは少しだけ口の端を上げる。
アンタの指の先を伝い眺め、日誌に転がり落ちたシャーペンに目を止めた。
これ、オレの使ってるのと一緒じゃね?

ピンク色のシャーペンは書きやすくて最近気に入って使ってるのと一緒だった。
すっげー偶然じゃん。やっぱオレら気が合うみたいな?嬉しくなって目尻も下がったのが自分でもわかる。
転がったシャーペンをそっと手に取ってクルクルとひとしきりまわして、ふとある考えが浮かんでギュ、と握った。

イスの隣に置いた自分のカバンを眺め、こく、と息を飲んでペンケースを出した。ゴソゴソとペンケースを漁りピンクのシャーペンを取り出した。

全く同じだけど同じじゃない。
1つはアンタが使ってた特別なやつ。
ああ…もうオレ今すっげヤバいこと考えてる。

数秒自分のとアンタのを見比べ悩む。
ダメダメダメでしょ!
いや、でも同じだし?
起きる気配がないアンタを見つめた。
ドッドッドッて心臓が速くなってく。


『ごめんなさい』


アンタの方のシャーペンをこっそり自分のペンケースに入れた。
やってしまいました。
マジごめん。ほんとごめん。オレヤバい。ホントやばい。
キョロキョロ辺りを見渡して、はぁー…ってまた大きく息を吐き出した。

「……ん…」

やっばっ!!!

「じゅ、んぺく…」


え?今、オレの名前呼ばなかった…?
いや、ちょっ待って!!気のせい!?幻聴!?それよかやべぇ!起きるって!!
慌てて自分のシャーペンをアンタの手元に戻してバクバクする心臓を必死に抑えて平静を装う。
ゆっくりとまぶたが持ち上がり、止まった手が握られる。ぼんやりとした視線が持ち上がってオレと目が合った。

「え…、ニー…ナ?」

オレを認識して黒目がちな大きな瞳が益々大きくなる。

「おはよ。寝すぎ、アンタ」
「や、ヤダ!来てたなら起こしてよ〜!」

アンタは耳まで真っ赤にして俯いてぴょんと跳ねた前髪を必死に整えてた。
内心まだバクバクしながら余裕こいて席を立つ。
オレ変じゃね?ダイジョーブ?声とか上擦ってねぇかな?

「ほーら、いこーぜ。」
「ま、まって!」

横目でみた慌てて書かれる日誌を滑るのはオレが入れ替えたピンクのシャーペンで、日誌を書き終わった後はそのままアンタのペンケースにこっそり忍び込んだ。

やってしまった…。
あーもうヤダヤダ…。
変態クセェ…。

顔を直視出来なくて後ろ背にアンタを感じながら教室の入口でアンタを待つ。もしかしてマジ名前、呼んでくれたのが気のせいじゃねぇなら少し期待してもいいのかなーんて…。
背中にアンタを感じて思う。





いつか、言えたらいいな。
『美奈子ちゃん』が好きって。


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