▽ 認められない恋心
3年目のバレンタイン…
正直甘いものが苦手な俺は、このイベントが苦手だ
教室も甘ったるい匂いが充満して、吐きそうになんだよ
義理だのなんだのって貰っても、迷惑でしかねぇし、返すつもりもねぇし、突っ返してた
強引に渡されりゃ、全部ルカに渡して食わせて後は無視だ
ありゃ嫌がらせだろ?
なのに毎年、毎年、俺でも食えるチョコを美奈子が作ってきた
始めは「チョコかよ」って嫌な面みせて、「食いたくねぇ」って、突っ返そうとしたのに「甘くないよ?」ってまるで俺の心ん中読んだみたいに、その場で食わされた
「面倒臭ぇな」って思ってた俺がすんなり食えたソレに少し驚いて、美奈子をみた
嬉しそうに笑う美奈子に少しドキッ、としながらも、照れ臭くて適当に何も考えずに、お返しは自分が好きなもんをやった
3倍返しとか、んなもんどうでも良くて
時間が経つにつれて、もっとマシなもんやれば良かったとか、美奈子の事ばっか考える様になってった
美奈子は妹みてぇなもんで、好きとかそんな感情なんか起こるハズはねぇ
…今年も貰えんのか?
って少しだけ期待する自分を認めたくねぇ
「あ、もう少しでバレンタインだね」
「あんな甘ぇもん貰って何が嬉しいんだよ」
風呂から上がったルカが、目の前にドサリと腰をおろし、冷蔵庫から取り出した飲みモンで、喉を潤して俺のカップに入ってるコーヒーを見て、苦そうな顔をした
「貴重な食料だよ、コウこそそんな苦いもん何が美味しいの?」
「お子ちゃまにはわかんねぇよ」
「俺、大人だよ?」
「そんな意味じゃねぇよ、馬鹿かテメェは」
「美奈子、今年もチョコくれるかなー」
出た名前にドキリ、として平然を装い雑誌をめくる
「どうせお前の事だから、請求しに行くんだろうがよ」
「コウには請求しなくても、手作りくれるのにねー」
「甘ぇの食えねぇからだろ」
「それだけー?ホントにー?」
「それ以外何があんだよ」
ニヤニヤするルカに苛立って、雑誌をルカの方に投げてソファーから立ち上がる
キャッチした雑誌をめくりながら、視線を落としたままで、ルカが口を開いた
「いっその事、美奈子がコウに、チョコあげなきゃ面白いのに」
「別にいらねぇよ」
「じゃ、他の男に美奈子が、手作りチョコ渡してもいいんだ」
「美奈子の勝手だろ」
それはすげぇ嫌な気もする
「俺、本気で美奈子狙っちゃおうかな〜、可愛いし」
「狙えばいいだろ?」
「ふ〜ん、いいんだ〜」
「…何だよ」
「べっつにー」
ちっ、と舌打ちしてバスルームに向かった
ルカが相手でもムカつく
ダメだ…考えたくねぇ
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