▽ 願い事
神様。
神様。
お願いします。
ずっと彼女の側にいさせてください。これ以上の幸せを願ったりしないから。もう大切な人を失いたくないから。
毎年恒例になった初詣でお決まりの台詞。
「何お願いしたの?」
オレをクリクリした目で見上げていつもの様に腕に手を回す。
回しとけって自分でいったくせに、そんな事されるとドキドキする。一緒に来たくて、朝まで起きてたし。
「秘密〜」
そんなの完全な告白になっちゃうよ。
まだ…、いえないんだ。
巡る季節を当たり前のように傍にいて、いつの間にか『幼なじみ』は『特別』って言葉じゃ収まりきれない大きな存在になってた。
再会して今まで側に入れてスゲー幸せだった。
けど俺のせいで、お前は不幸せになったりしてないかな…。
そう思うとまだ勇気が出せない。
お前はどう思ってる?オレの事。
オレが想うように思ってる?
一緒に居てくれるのは、同じ気持ちだからだと信じていい?
だって何度、ブレーキかけてダメだと言い聞かせても止まらないんだ。
そんなに無邪気に触らないで。
触れる度に堪らなくなる。
何でこんなに苦しいんだ。
こんなに誰かを好きになるなんて一生ないと思ってた。
「ルカ!」
呼ぶ声に我に返ると心配そうな顔で彼女が覗き込んでいた。
ああ、ほらまたこんな顔させたりして。
大好きな顔を曇らせちゃうんだ。
「ああ…ゴメン、ボーッとしてた」
「朝まで起きてるからでしょ」
プゥッとほっぺたを膨らませて怒って、風船が弾けた様にクスクス笑う顔が好き。
「おみくじ引いたしどうする?」
お願いまだ帰るなんていわないで、あわよくば『もっと一緒にいたいな』なんていってくれちゃったりしないかな…。
「タコ焼きと、甘酒でしょ?」
う…、いったな…。確かに俺それいった。まぁいっか…まだ一緒にいられる。理由なんてなんでもいいんだ。
思わず顔が緩んでしまう。
「じゃあ本日のメインへいきますか?」
ウンっと満面の笑顔で頷かれて、絡めた腕に力を込められる。
混雑した神社の往来は思ったよりも多くて、二人で人混みを縫うように進みながら『人凄いね』とか他愛のない話して3年目の初詣もそろそろ終わり。
お前を送って行ったついでに少しだけきいていいかな?
ずっと気になってる事。
お前は今幸せ?
End
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