▽ イタズラうさぎ
「…な、なんでるぅが動いてるの!?」
太ももにしがみついてる俺の両手を握って、床にペタンと座った美奈子の目の前で、俺は小首を傾げる仕草
マジマジと俺を見つめて、優しく微笑んだ
あ…この顔すごく好き
「…夢?魔法?」
存外メルヘンだよなお前って
魔法はないでしょ
しかも中に入ってるのは、うさぎの皮をかぶった『ルカ』なんだけどね
ここはコクと、頭を縦に振ってクルッと、美奈子の前で回ってみせる
あくまでも警戒されないようにかわいく振る舞わなきゃな
「あははっ、るぅ上手〜!」
よしっ怪しまれてない!
パチパチと手を叩いて、俺の顔を触るから、調子に乗って、バフッと胸に抱きついてみる
いつもだったら、もう怒られてるけど今日は平気だ
ぬいぐるみって役得〜
「くすっぐたいよ〜、るぅ!」
美奈子にスリッと顔を擦り付けて、ワザとおっぱい触ると、ポヨンとした弾力が伝わ……らない!
何で!?
ポムポム、おっぱいを何度もつつくけど、柔らかい感触はわからない
「くすぐったいってばー!」
くすぐったがって笑う姿は、全く警戒心なんかないってわかってるのに!
目の前にはこんなに美味しそうなのがあるのに、触ってもわかんない、何も出来ない!
触れると思ってたのに!現実では触れないから、せめてぬいぐるみの時位、いい思いしてもいいだろ?
なんだよそれー!ただの拷問にしかならないよ
最悪だ…
「る、るぅ…?」
触りたいよ…見たい…!
男子高校生の欲望ナメるな
ショックで、床をテフテフ叩いて、涙なんか出ないけど顔を覆ってメソメソしてると、美奈子がグテーッとした俺を抱いてベッドに乗せる
「どうしたの?」
どうしたの?じゃないよ
せっかくこの面白い状況で、イタズラも出来ないなんてさ
こんなんだったら本体に戻りたい
はぁっ、とため息ついてベッドに美奈子の隣で横になって頬杖つく
俯せで足をパタパタさせ、携帯みてる美奈子の横顔を見つめた
「ルカ返事くれない…」
そういえば『メールして』って俺言ったんだっけ
まぁ、俺は結構ほったらかされるんだけど
美奈子ってば俺のメールこんなに待ってるんだ
かわいいな
だけどさ、少しは俺が淋しい気持ちも分かってくれないかな
中々好きっても言ってくれないし、つき合ってるのにキスもあんましさせてくれない
こっそり教室でキスしようとした時も、バイト中とかもさ〜
……迫る場所が悪いのか
「もう!ルカのバカ!」
ちょっと怒って、俺へ送信用のこわーい文面をのぞき見て、美奈子に擦り寄ると、フワッと微笑んでくれる
「なぐさめてくれてるの?」
そんなに怒んないでよ
本当は俺、側にいるんだよ?
美奈子の頭をなでなですると、ギュッと抱きしめてくれた
「ねーぇ?るぅ…わたし自信ない…」
悩み事?いいよ『るぅ』が聞いてあげる
パチと照明落とされて、美奈子は『るぅ』に今日あった事を報告し始めた
「ルカってさ、他の女の子とも仲良くしちゃうし、いっつも冗談ばっかり言ってるし、かわいい子ばっかりに囲まれてるの…こんな事なら、つき合ってるの内緒にしなきゃ良かったな…」
大きなため息をつきながら、俺の手をギュッと握ったり、ツンツンと、耳を指に絡ませる
何も感じない体なのが口惜しいな
けど、俺ってそんなに他の女の子と仲いいかな
お菓子貰ったり、お弁当貰ったりしちゃうから?
それよりも、今つき合ってるの内緒にしなくていいって言ったよね?
「ホントはね、ルカともっと一緒に居たいの…」
あんなに怒るクセに、それが美奈子の本音なんだ
すっごい嬉しいな
俺だって一緒に居たいよ?
美奈子がそう思ってるんなら遠慮しない
頭の中に学校でやりたい事がいっぱいあるんだ
ウトウトし始めた美奈子は、俺を抱きしめたまますぐに規則正しい寝息を立てはじめた
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