表*部屋 | ナノ

▽ クマった出来事


聞かねぇように耳をパタ、と手で押さえると、美奈子がプゥ、と膨れて手を耳から離された
この俺が力で勝てねぇって…
この非力クマが!

アワアワもがいても、美奈子の手は俺の手を掴んだまんま
強制的に美奈子の独白を聞かされる


「どうすれば、大人の女の人みたいになれるかなぁ…」


何どーでもいい事悩んでんだよ!
そのまんまでいーんだよ!


「コウちゃん…、仕方なくわたしにつきあってるのかな…」


しょんぼりして、悲しそうな顔をみせる

俺が見た事もねぇ顔しやがって
『コウイチ』にばっかり、んな顔みせんのか?
大体仕方なくで女とつきあえるわけねーだろ!
全部俺に直接言えよ!


「今日ね!電話くれるって!」


ピシリと動きを止める
そうだった…!
帰りに『夜電話する』って言ったんだった…
この状態で、どうすんだよ
頭を抱えて戻る方法を考えてもわからない
ベッドから降りて、持ってきた携帯を枕元に置き、俺の横に転がって鳴らない電話を美奈子は待ってる


「遅いなぁ…、こっちからかけてみてもいいかな?どう思う?コウイチくん」


フルフル、首を横に振ってみた
かけたって出ねぇよ…
俺は今ここに居る


「うん、そうだよね!かけるって言ってくれたんだもん!じゃメールだけ打っちゃお!」


カチカチメールを打って、俺にメールの文章見せて、嬉しそうに送信した
1時間、2時間…時間は過ぎてって、日付が変わった


「…コウちゃん…、寝ちゃったのかな…」


泣きそうな美奈子を見てらんなくて、ベッドを降りて、電気の紐は遥か上
背低いってこんな不便なのかよ…
普通のサイズでもねぇしな…
勉強机から椅子を持ってきて、カラカラ押して、電気の下に持ってくる


「コウイチくん、どうしたの?」


両手で精一杯手を伸ばしても、電気の紐に手が届かなくて、美奈子が俺を抱きかかえる


「電気消そうとしてたんだ〜!そうだね、もう寝なきゃ…、コウイチくん電気消そ?」


ヒョイッと俺が紐に届くように美奈子が抱える
マジで情けねぇ
片手じゃつかめねぇ紐を両手で引っ張って、電気消して美奈子のベッドに横になる


「コウちゃんね、きっとバイト入っちゃったんだよ」


それだったとしても、メールだってなんだってできんだろ?
ぶん殴りてぇ…
俺なんだけどよ
クマの俺に抱き着いて、必死で自分に言い聞かせる美奈子に申し訳なくて、力いっぱい抱きしめた
あんま力入んねぇけど…


「やっぱりコウイチくんて、コウちゃんみたい、大好き…」


俺、今何でクマなんだよ…
抱き着いたまま眠りについた美奈子をしばらく見つめてると、俺の意識もそのままなくなった





意識を取り戻すと、いつもの見慣れた風景
俺の部屋だ…
夢だったのか…?
手を見て、体をみるといつもの俺


「あ、コウやっと起きたの?」

「あぁ…」

「昨日起こしても全然起きないんだもん」

「…いつから?」

「俺がバイト帰って来た時には寝てたなぁ」


もしかして夢じゃねぇのか?
携帯を開いて、メールBOXを確認すると
昨日美奈子に見せられた文章
やっぱり夢じゃねぇのか

ガバッと起き上がって制服を着込む
とにかく今すぐ美奈子に会いてぇ


「完全遅刻だよ」

「いつもの事だろ」

「まぁね」


ルカと学校に着いて美奈子を探す
学校中探しても見つかんなくて、メールで呼びだしゃいいじゃねぇかって気づく
焦りすぎだな…


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