わたしには自慢の彼氏がいる。名前は志摩柔造。ルックス性格人柄なかなか全部バランスが良いと思う。仕事に対しても熱心だし、でも二人の時間もちゃんと作ってくれるし…始まりはわたしが高校生になって成り行きで告白したら柔造はわたしの事が好きだったらしくてそしたらわたしも本気で柔造の事好きになっちゃって…付き合い始めてからもう2年目で、高校卒業してからねって事で…婚約だってした。彼と居ると最悪な日でも最高になるし、飽きたなんて一秒足りとも思わなかったし本当に幸せだった…いや今もスゴく幸せだ。何もかもが順調だった。


「柔造っ、久しぶり!」

「ほんま久しぶりやなぁ、元気しとった?」

「…柔造に会えなくてわたしは寂しかった!」

「あぁ、もうほんま可愛え!」


優しくわたしを抱きしめてくれる柔造。その光景を見た金造が「たった一日逢わんかっただけやろ」って冷めた目で見てきたけどそんなのお構い無し。昨日は忙しくて逢えなかったけどいつもだったら毎日逢いに来るしたった一日だけどされど一日だもん。久しぶりに柔造に抱きしめてもらって、いつもの温かいその体温にスゴく安心した。


「…ずっと一緒に居よう?」

「おん、勿論に決まっとるで」

「柔造、好き…」

「俺も…愛しとる」


ほんまバカップルやな、そう言って金造は和室へと戻っていった。わたし達は縁側に腰掛けて二人で昨日の出来事とか、色々話したかった事とか軽く三時間は話してすっかり夜になった。それで今日はわたしも京都出張所の仮宿に泊まる事になって、柔造は仕事みたいだからわたしは廉造と金造と一緒にずっと話していた。たまに廉造と金造が喧嘩するような雰囲気になる事があったけどわたしが仲裁に入ったから何とか酷い喧嘩にはならずに済んだ。久しぶりに二人とじっくり話して気づいたけど二人も何だかんだで顔は良いと思う。廉造はわたしにいつも優しいし(女タラシだから嫌だけど)、金造は何だかんだで面倒見良いし(意地悪だから嫌だけど)、別にモテてもおかしい要素なんてないなぁとか思いながらもうそろそろ寝ようかと自分が借りた一室へと続く板張りの廊下を歩いて、柔造がいつも資料とか見ながら仕事してる部屋の前で止まる。此処で柔造が仕事頑張ってるのか…。


「…柔造くん、」


…は?え?今、柔造がいる部屋の中から女の人の色っぽい声がした。しかも二三回、若干喘ぎ声混じりで。嘘、聞き間違いだとわたしと部屋を隔てている襖を開けた。


「………名前、!」

「…は?え?」


理解出来なかった、いや、したくなかった。部屋の中は真っ裸の見たこともない女と着物をはだけさせた柔造の姿。1つの布団の上で二人が抱き合って……………は?何なの、わたしはまだ高校生だからそういう事するのも卒業してからって…柔造言ってたよね?何で?じゃあ何でその女と先にヤっちゃってんの?


「…っふざけんじゃねぇよ!柔造、アンタわたしと結婚するって言ってた話、あれ嘘だったのかよ!わたしがどんだけ本気にして嬉しかったと思ってんだよ!はぁ!?…アンタは遊びだったの!?その女とセックスしてその汚い手でわたしを触る気だったのかよ!…ふざけんな!しねよ!ッしね…しねよ…!しねってばぁ…!!」


茫然としてる二人の前で脳内に浮かんで来た怒り全部投げつけた。まだまだ言い足りなくて「しね」その二文字を連呼する。怒ってるのに涙ばっかりボロボロボロボロ溢れてきて、途中でつっかえて嗚咽しか出てこない。わたしの叫び声を聞き付けて金造と廉造が駆けつける。二人とも目を見開いてまさか自分の兄がという表情を浮かべているけどわたしにはそんな事関係ない。未だに子供みたいにぎゃあぎゃあと泣き喚いているわたしは金造に後ろから首根っこを掴まれて止められて、そのまま連れてかれた。




「ッ、好きだった………好きだったのに………あんな最低男死ねば良いんだ…ッ!」

「まぁ柔兄が浮気するようには見えへんかったしなぁ…」


やっと落ち着いたわたしは今度は金造と縁側に腰掛けて、散々泣いて悪口を喚き散らした。夜の風は冷たくて心地よくて火照ったわたしの顔を少し冷ましてくれて、金造はわたしの悪口を反抗するでもなくただ聞いてくれた。どうしてわたしは柔造を好きになったの。あんなに好きだったのに今はただ後悔の念しかない。ムカつくのに、悪口しか思い浮かばないのに……………どうしてずっと思い浮かぶのは………。




「好きだった…、好きだったよ…」




(どうぞ、わたしのことは忘れて。それでもわたしは一生アンタを好きで、縛られて、忘れられないから。)



浮気されてもそれくらい好きだった。






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