じーっと、今日もこの席で後ろから貴方を見ています。あぁ、今日もカッコいいなぁ。ピンク色の髪の毛の志摩廉造くん。実家が京都にあって、お友達の勝呂くんと三輪くんと祓魔塾に通っている男の子で、出雲ちゃんからは近付いたら駄目だって言われるけど女の子に分け隔てなく接してくれて志摩くんはとっても優しいの。そんな志摩くんにわたしは恋をしてしまった。席変わったんだって皆から言われて、気分転換にねって言ったんだけど本当は彼を見る為に斜め後ろの席に移動したんだけど、その本人にも「席変わったんやね」ってあの柔らかい笑顔を浮かべて声をかけられたから思わずキュンときちゃってうまく喋れなかった…。
でもこの席になって、距離も近くなったからやっぱり変えて良かったと思った。スッと細い体付きだけど、適度に鍛えられた感がある腕につい目がいってしまう。斜め後ろだからこっちは見放題だけどあっちは気づいてないからベストな位置なんだよね。えへへ。


この席になってから気づくことは沢山あった。睫毛は意外と長いんだなぁとか。真面目に先生の話聞いてるように見えたけど、実は教科書で隠して……エッチな本見てたりとか。うん、まぁ年齢的にも健全な男の子だしそれは仕方ないよね!それから、居眠りしてるとき(いつも先生にバレてないみたい)なんかは最高にキュンキュンしちゃう。いつもはそれなりに年齢を感じさせる表情を浮かべてるんだけど、寝顔が凄く幼いの。距離が近いから寝息までもが聞こえてきて先生の話そっちのけで見いっちゃったりするんだけど。
今日の授業はちゃんと起きてるみたい。まぁ後5分で終わるし、それが終わったら帰れるもんね。




帰ったら何しようかなぁとか、今日のデザートはプリン買って帰ろうかなぁとか色々考えたら5分なんて短い時間はとっくに過ぎ去ってしまった。奥村くんとしえみちゃん達は、既に帰ったみたい。それから神木さん、宝くんも帰って残るは勝呂くん、三輪くん、それから志摩くんの三人とわたしだった。元から志摩くんはマイペースだから帰宅準備をするのが遅い為に二人が待っているというデフォルトだった。それから志摩くんが帰る時にわたしが未だ教室に残っていると「ほな、苗字さんまた明日な」って笑みを浮かべて手を振ってくれるのが嬉しくて、いつもわたしは志摩くんより遅く教室を出るんだ。さすがに、トロいと思われてるかもしれないけど…でも、それでも意中の相手が此方に笑みを向けてくれるならそれで良いと思ってしまう。


「ほな、またなぁ苗字さん!」


「あ、う、うんっ、またね!」


こっそりとわざとゆっくり教科書や筆記用具を鞄にしまってたらお決まりの言葉をかけられて、それから教室を出て行った。わたしは、最初の方は恥ずかしくてワタワタする事しか出来なかったけど今では挨拶を返す事も出来るようになった。少しは成長したよね!…あれ、?…ノートが落ちてる。
志摩くんとわたしの席の丁度斜め辺りに不自然に落ちているノート。拾って名前を見てみると「志摩廉造」の文字。…意外と文字綺麗なんだなぁ……、じゃなくて!…どうしようこれ…今日は金曜日だから土日挟んで休みになるから今走って呼び止めに行った方が良いよね!


荷物を持って右手にはノート、教室から出ると然程距離の無い真っ直ぐの廊下に志摩くん一人が歩いていた。


「しっ、しっ、志摩くん!」


名前を呼んでも聞こえなかったみたい。これは相手に追い付くしかないと小走りで廊下を過ぎ去る。体力が皆無と言って良い程無いわたしには軽く走るだけで息切れが半端なかった。


「あれ、苗字さん、そない走ってどうしたん?」


バタバタとしたわたしの足音で漸く志摩くんは気づいて振り返ってくれた。とは言っても志摩くんの真後ろまで走って来て気づかれたんだけど…。でも、うわぁ、は、話せる機会が出来るのなんてもう二度となさそうなんだけど…何て言おう!と、とりあえずはノート渡さなきゃだよねっ。頑張れわたし!


「…えっと、志摩くん、ノート落ちてた…から。」


「えっ。うわ、それだけで走って来てくれたん?ありがとぉな、わざわざ…」


我ながらに可愛くない無愛想な話し方。落ち着け…こんなんじゃいつまで経っても緊張してるだけで後からきっと後悔する!


「えっと!…志摩くん、ま、また月曜日…塾で、ねっ、…バイバイ!」


「うん、ほなまたな、バイバイ」


思いきって手を振ってみたら、向こうも手を振り替えしてくれた。今嬉し過ぎて心臓が爆発しそう…わたし幸せ過ぎて…し、死んでも良いかも!すごい嬉しいっ。


「…やっぱ嘘も吐けんし知らんフリはできへんわ」


「…え?」


歩き出した志摩くんがピタリと足を止めて此方を振り替える。初めてみる彼の真面目な顔。…ていうか嘘とか気づいてないフリって…え?何の話?訳が分からずに茫然としていたわたしの方を向いて、彼は元気良く口を開いた。


「          」


「………………えっ、」


志摩くんが柔らかい可愛らしい笑顔を向けて放ったその言葉に耳まで真っ赤になったのが自分でも分かって、再び手を振り歩いて行く彼の背中をただただ見つめる事しか出来なかった。



(「本当は苗字さんに拾ってもらいたくてわざとノート落としたし、それからいつも授業中にこっち見てるの気づいとったんやけど…期待してもえぇんかな?」)
(少しの勇気と勢いで随分距離が縮まった気がした。)




長々書いたのに何かgdgdオチだなあ。




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