2024, 02, 26

創作

お久しぶりです!

 カタン、と小さな物音がした。ほんの小さな音だったので、聞き間違いか? とふと顔を上げる。僕の場合は耳が良いので間違えることはあまりないのだが、それでも空間には何もなかった。調合していた薬草の小瓶、棚に並ぶ本達、泡のようなシャボン玉のような虹彩と、明かり採りの窓から差し込む柔らかい日差し。かすかに舞う埃。視界に映るのは見慣れたそんなもの達。
 ふわふわと空間に漂う虹彩は目の錯覚などではなく、この世界にはなくてはならない、命の源のようなものだった。僕達人間が、生きるために必要な酸素と同じような、そんな存在。
 それを僕達は「匕ュム」と呼んでいた。時には淡い青や赤、黄色、オレンジにもなり、虹色のグラデーションに輝いたり。なんとも不思議なのだが、それが当たり前の僕達には「当然のように当たり前にそこにある」のだった。

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