05
「久しぶり、なまえちゃん!」
「ほんと久しぶりだなー!」
「ねー! おそ松とトド松! なっつかしー!」
カラ松に引き続き、六つ子の長男と末弟との再会を果たしたか、その経緯がよく分からない。
急にカラ松から告白された後、その次の日におそ松兄さんとトド松と会ってくれ。とLINEが届いたので、私は懐かしみを帯びながらオッケーのスタンプを送ったわけだが。
カラ松と一緒に行った店に入り、私の向かい側にはおそ松とトド松が座っている。
それにしても本当に懐かしい。
おそ松はあんまり変わってないな。
だが、席に着いた瞬間トド松に「あちゃー財布忘れた〜」と言い、末の弟に自分の分を払わせるというクズっぷりは……うん。
でもトド松は変わったかも。
なんか……女子力が高いというか、頼むメニューが女の子っぽいし、服装もピンク系でおしゃれだし、スマホを使いこなしているのも今どきって感じがする。
2人ともカラ松と同じくニートらしい。
トド松は「僕はバイトとかしてたから!」と言うけど、過去形なところが気になるところ。
おそ松は働く気は0らしく「働くなんて贅沢!」と言ってカクテルを飲んだ。
「つかこれ甘くね? 俺日本酒が良いー!」
「ここはカフェだからそんなのないの! もう、やめてよね。恥ずかしい……ごめんねー」
「あはは、2人とも変わったよねー。まぁ、私の中ではカラ松が一番衝撃的だけど」
笑いながら言うと、急に2人とも笑っていた表情をピシッとさせて顔を見合わせた。
何事かと思い、2人につられて表情がピシッとなり、2人をじーっと見つめる。
「カラ松兄さんのことなんだけど」
「っは、はい」
トド松のトーンがマジだ。
これは、もしかしてもしかしなくても。
カラ松はあの事を言ったらしい。
その雰囲気に圧倒され、思わず敬語になった。
「あいつ、なまえのことマジらしいからさ。本気で考えてやって欲しいんだ」
「……うん。本気って事は、分かるよ。私だってカラ松の事、嫌いってわけじゃないもん」
「じゃあ、好き?」
そう聞かれると、言葉に詰まる。
あの告白の内容からすると、カラ松は私が引っ越しした後もずっと好きでいてくれていた、という事になる。
そんなカラ松の気持ちを軽く考えたくない。
そう思いつつも、やはり答えが出せないでいる自分の気持ちもいつ我はしないかった。
「私は、まぁ2人も知ってる通りカラ松と結婚の約束したけど。あの時は本当に好きだったよ。今好きかって聞かれて答えられる答えは曖昧だけど、一番の原因は……」
「一番の原因は?」
2人の声がハモる。
やはり兄弟だな。
なんて場違いなことにも思いながら、私はアイスココアを飲んでから続けて言った。
「カラ松が変わってるってこと」
「……あー、なるほどね」
「まぁ、確かにあれは戸惑うわな」
うんうんと頷く2人に、もしかしたら嫌な印象を持たれてしまうんじゃないかと思っていた不安は吹き飛んだ。
「カラ松があの時のままの性格、ってことは私には分からないし。もっと考えたい。でも、なるべく早めに返事はするからってカラ松に言っておいて。あ、ちゃんと連絡は自分でいれるよ!」
私は手の中にあるスマホの画面と、かれこれ10分間ずっとにらめっこしていた。
あれから解散し、トド松はやはりおそ松の分の料金を睨みながら払っていた。
うーん、その収入源はどこから来るのか。
「『明日の午前10時にあの店の前で待ってます』……うーん、素っ気ないかも……『明日の午前10時に話があるからあの店の前で待ってるね!』は……なんか、軽い」
打っては消し打っては消す。
その繰り返しだ。
悩みに悩んだ結果、カラ松へと送るメールは『話があるから、明日の午前10時にあの店の前で待ってるね』を打ち込んで送信した。
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