小説 中編 | ナノ
04
「カラ松兄さんおかえりー」

「遅かったなーカラ松」

「どうせまた逆ナン待ちだろ?」


いつも通りの兄弟からの言葉。
だが、俺自身はいつも通りではなかった。

多分、今すごく顔が赤いと思う。
でもそれに触れないと言うことは、顔は赤くないが、自分の心が熱くなっているということなのだろうか。

皆のおかえりの言葉に「ただいま」と返し、俺はふらふらとした足取りのままテーブルに覆いかぶさるようにしてつんのめった。


「なに、コイツどうしたの?」

「さぁ……」

「逆ナンされなかっただけじゃない?」

「いや、それにしてもさ」


『様子、変じゃない?』

兄弟たちの心が一つになった瞬間だった。
皆はカラ松から、その原因となる事柄の事情聴取をする事に決めた。


「カラ松兄さん、何かあった? 変だよ」

「何かあったら俺たちに言えよ! な!」

「カラ松兄さんおかしくなっちゃった!?」


あー、皆が俺の周りで何か言ってる。
いつもなら考えられない状況で、普通の俺だったら飛び上がって喜んで会話するのに、今は何故かそれさえも出来ないくらいの気分だった。

……ん? まてよ。
12年前の約束。
つまり小学校は同じ。だから、その時はもちろんおそ松兄さんたちもいた。
六つ子と仲良しだったなまえちゃん。


「あー!!」

「っなんだよカラ松!?」

「急に大声出さないでくれる!?」

「びっくりしたー!」


口々にそういうMy brothers。
俺は立ち上がって言った。


「皆、なまえちゃんって……覚えてるか?」


俺がそう言えば、皆は顔を合わせて「なまえちゃん?」「ほら、引っ越しちゃった子」「あー、仲良かった子」「あの可愛い子か!」と言い始める。

だが、今は懐かしの雰囲気になってほしいわけじゃない。さっきの話の相談をしたかったのだ。


「落ち着いて聞いてくれ」


今日の一連の話の流れを皆に説明すると、皆の表情はポカーンとしていた。


「マジで言ったの? イッテー! 助骨逝った!」

「ほんとイッタいよねー!」

「すっげー! ドラマみたい!!」

「十四松最近昼ドラハマってるもんな」

「内容は分かってないでしょ」


途中で話が逸れた気もするが、俺が話した内容は間違えもなく皆に伝わったようだ。

そして、言いたい事は一つ。


「俺、もしも断られたらどうしよう……」


弱気になるなんて嫌だけど、やっぱり自分のマイナスな部分も出てきてしまう。
しょうがないと思うところだが、やはり心の奥底で思ってしまうのだ。

考えるだけで目尻にじわりと涙が浮かぶ。
目の奥が熱くなってツーンとした。
俺ってこんなメンタル弱かったか?
そう思うくらいやつれそうだ。


「……重症だなーこいつ」

「カラ松兄さん、今でこんななのに、振られたらどーなっちゃうんだろーね!!」


十四松のその一言で、カラ松以外の皆の心の中がまた一つになった。

『どうやってでも、なまえちゃんとコイツをくっつけよう……!』と。
何をしでかすか分からない。
兄弟たちにその不安が募った。




「カラ松?」

「……なんだ?」

「俺たち、応援してるからな!」

「ありがとう……My brothers……」

「アイタタ」

「トド松言ってるやるな!」

「ごめんねー」

「あばら折れるわー!」

「……え?」



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