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周りがすごく静かだ。
皆シーンとして、聞こえるのは、自分自身の鳴り止まないくらいの胸の高鳴りだけ。
カラ松の顔にオレンジ色の夕日が照らされた頃、ようやくカラ松が口を開いた。
「……気持ちなんて、変わってない」
その言葉に思わず息を飲む。
「俺も、お前が好きだ。どうか、俺と付き合ってほしい」
そんなの答えは人に決まってるじゃないか。
もう私の声の震えは止まっていた。
なんてロマンチックなんだろう。
「よろしく、お願いします」
そう言った瞬間、先ほどのスタッフさんの明るい「おかえりなさーい!」と言う声が聞こえ、思わず口をつぐんだ。
どうやらもう着いたらしい。
気づかなかったなんて……。
私達はぽかんとしたまま顔を見合わせ、笑い合ってから観覧車の個室を降りた。
近くのベンチに腰を掛ける。
周りには数羽のスズメがチュンチュンと鳴き、地面を軽やかに歩いている。
「えっと……じゃあ、俺たちは、その、つまり……恋人同士で、良いんだよな」
「う、うん……そうだね」
「そっか……あ、あはは」
「あははは……」
恋人って、どんな事するんだろう。
手を繋いだり、デートしたり。
ああ、やっぱりキスは大事なのかな?
カラ松といずれかは、そう言う事をするなんて、今じゃ考えられないけど。
「……なまえ」
「っは、はい!?」
「俺たちは一度、子供の頃に婚約をしたな」
「……うん、したね」
なんだろう、改まって。
その声色の真剣さに、思わず背筋をピンとしたまま、固まってカラ松を見つめる。
「そ、その……大人になったら、結婚してくれないか?」
「……っぷ、あはは! 私達もう大人じゃん!」
「だから、その……そう言う事だ」
顔を真っ赤にして顔をそらすカラ松。
そう言う事って、そう事……だよね。
結局また振り出しに戻るみたいだ。
でも、子供の時より鮮明で、分かり合える。
『その時が来たら結婚しよう』。
今度はそれが口癖になりそうだ。
end.
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