01
六つ子のレンタル彼氏で、もしもヒロインが胸を触られたら。
※会話文注意
長男の場合
「なぁなぁ俺を借りてよー」
そう言って私に擦り寄るおそ松くん。
事の発端は、私がおそ松くんに呼ばれ家に来たは良いがその内容が「レンタル彼氏」なるものわやっているから俺を借りろの事。
何でそんな事思いついたの?
なんて聞けば、おそ松くんは「小遣い稼ぎ」とニヒルに笑って見せた。
「もー離れて、小遣い稼ぎならアルバイト探せば良いでしょ!?」
「そんな事言わないでさ、ほらほら、こんなイケメンなかなかいないぜ?」
「自分で言うな……ってか、もしかしておそ松くん酔ってる?」
私がそう言うとおそ松くんは元から赤かった顔をもっと赤くして「酔ってねー!」と言って私に抱きついた。
何故赤くする必要がある。
そう思ったが、おそ松くんは酔うと抱きつき癖が現れるので間違いないのだろう。
「昼間っから酒飲んで〜!」
「しょうがねーんだよ……っこ、こいつから俺を誘ってきたんだぜ!?」
「変な言い方しない!」
そう言って私が戯言を言うおそ松くんの頭を叩くと、そこまで強く叩いてもいないのに「痛い〜」を連呼して私の膝に頭を乗せた。
これには思わずびっくりして「ちょっとおそ松くん!?」と叫んでしまった。
顔が赤くなる。
友達とは異性にこんな事されたの初めてだ。
あー、ズボン履いてきて良かった。
スカートだったら恥ずかしすぎる。
「おー、俺、女に膝枕してもらったの初めてだわ。超やわらけーな」
「〜っバカなの!? それこそ私がレンタル彼女やって料金貰うよ!?」
「は? なら今のうちに色々しといて良い?」
「え? なにいって……ひっ!?」
こいつ……こいつ。
胸触ってきやがった……!
「っおそ松くんのバカ! クソニート! もう知らない! クズ野郎め〜!!」
「あっちょ、なまえ! ……やべ、本能に身を任せすぎたかな……酒のせいって言ってもあいつ、口きかなそうだな……」
結論:罵られて逃げられる。
次男の場合
「カラ松くんって、前々からイタイって思ってたけど、イタイ上にバカなんだね」
「バッバカ!?」
「レンタル彼氏って……しかもぼったくり。カラ松くんをレンタルするって事でしょ?」
「おう!」
いや、そんな綺麗な笑顔で返事されても。
言っている事はおかしいのに。
何、レンタル彼氏って。
「初回はタダにしとくから、俺をレンタルしないかい? カラ松girl……」
「いや大丈夫でーす」
「ほんとか? それじゃ、パーカーじゃない勝負服に着替えないとな!」
「言ってないよ、イッタイねー」
「え!? すまん……傷つけるつもりはなかったんだが……やはり俺は罪な男だ……」
もう何も言えない。
この歳で厨二病なんて。
……手遅れだよ、もう。
カラ松くんはクローゼットを開け出し、ちらりと見ると中にはいつも着ているような尾崎リスペクト服がズラリとかかっていた。
「ちょ、勝負服ってそれ?」
「ん? ああ、そうだ。イけてるだろ?」
「イッちゃってるよ……ほら、格好はそのまんまで良いし、そもそも私は頼んでないから!」
「遠慮しなくとも大丈夫だぞ! 俺はお前の気持ち……分かってるからな」
あ、これイラっとくる。
一松くんがバズーカぶっ放す時の気持ち、結構私にもわかるかもしれない……。
「だからもう良いって!」
そう言って私がカラ松くんの肩を掴み、こっちに振り向かせようとした時だった。
「なっ!?」
「え? ……うわっす、すまん!!」
カラ松くんはきっと私の肩を押そうとしたのだろうが、その手は私の胸にあった。
すぐ手を離してくれたが、その顔は真っ赤。
……なんか、可愛い。
成人男性を可愛いなんて、おかしな表現かもしれないが、顔を真っ赤にして目のやり場に困っているこのカラ松くんを可愛いとしか思えないのだ。
「ふふ、かっわいー」
「かっかわいい!?」
「うん、胸触るだけでそんな照れるし」
「うっ……な、撫でるな!」
結論:色々といじる
三男の場合
「チョロ松くんも意外だね?レンタル彼女なんて、おそ松くんの思いつきに付き合うって」
「好きで付き合ってるんじゃないよ……」
「じゃあ何で?」
「あーそれは……うん、聞かないで」
急に赤くなるチョロ松くん。
顔近づけただけで……。
ほんとこの人はからかい甲斐がある。
純情だし、うぶだし。
「私レンタルしてあげてもいいよ?」
「ぶっ……いやいや、なまえちゃんまでそんなノリに乗らなくていいからね!?」
「おいくらですかー?」
「……し、知り合い相手に金取んないよ」
「へへ、じゃあタダでレンタルできるのか!」
そう言ってニヤニヤしながら笑うと、またチョロ松くんは顔を赤くさせた。
分かりやすくって、可愛いなぁ。
そんな思いが心臓の鼓動を速める。
お互い、もう20代前半だって言うのに、彼氏彼女いない歴=年齢だ。
「あれ、チョロ松くん。これ何?」
「っダメダメダメ! それは見ちゃダメ!! って……あー! 見ちゃったー!!」
「……アイドルの本、DVD、フィギュア、ポスター、ブロマイド……おー」
たまたま部屋の端に置いてあった緑色のボックスに目が行き、ついつい昔の様な癖でそのボックスに手を伸ばしてしまった。
チョロ松くんの今にも泣崩れそうな顔を見て、ごめんね……と思いながらもそんな表情するものだから何が入っているのかと気になるのが人間の性。
「……ドルオタでしたか」
「っお願い、皆には内緒にして! あ、おそ松兄さんは知ってるけど……」
「どーしよっかなー」
そう言ってボックスの中からにゃーちゃんのサイン入りのブロマイドを取り出し、立ち上がってチョロ松くんの顔の前にプラプラと振る。
うわ、今私最高に性格悪い。
「っ返してってばもう!」
「へへーん、やーだよっとぉ!?」
うわ、今最高に変な声出た。
しかも滑って転んだし、そしてまさかのチョロ松くんまで巻き込んで転倒、ごめんなさい。
「いってえぇ!?」
「ご、ごめ……っん!?」
「っうわああぁ!? すいません! すいません! ほんとそんなつもりじゃなくて! ごめんなさい! すいません!!」
そう言って頭を床に擦りつけ、完全に土下座体制のチョロ松くんに思わず気が抜ける。
「はは、胸触ったくらいで」
「女の子がそんな事言っちゃダメー!!」
結論:チョロ松がうぶになる。
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