小説 短編 | ナノ
02
「うまーい! うまいよー!!」

「よかったー、2人で作ったもんね?」

「うん!!」


そう言って二等分に切られたケーキをあっと言う間にモグモグと食べる十四松くん。

出来上がったイチゴのショートケーキ。
どうやら十四松くんは、ショートケーキのイチゴは最後に食べる派らしく、イチゴは皿の端にちょこんと乗せてあった。

私も食べてみるが、やはり美味しい。
なんでだろ、十四松くんと作ったからかな。
いつもよりも美味しく感じる。

自分でも素直に美味しいと感じながらパクパクと食べていると、十四松くんの口の周りにクリームがついているのを見てはぁと溜め息を吐いた。


「十四松くん、吐いてるよ、もー」

「あれ? ごめんねーってぁ!?」

「ん? なに?」


なに顔真っ赤にしちゃって。
かっわいー、ただクリーム食べただけなのに。
……ん? クリーム食べただけ?

視線を恐る恐る十四松くんと自分の指を交互に移すと、ハッとして自分も顔が赤くなった。


「ごごごごめん! つい! 妹にやる癖で!」


咄嗟に思いついた言い訳を口にすれば、十四松くんは赤い顔のまま「そっか!」と笑ってまたケーキを食べ始めた。

あー、何してんだろ私。
十四松くんもまだ顔赤いし。

口の周りについたクリームを指で取って、それを舐めるなんて……!
これほど自分を呪おうと考えた事なんてないと思えるほどに恥ずかしかった。

絶対引かれた。
気持ち悪いって思われた。
はー、バカだな私……。


「……なまえちゃん」

「っな、なに?」

「ケーキ、美味しかったね!!」

「……うん、美味しかったね」


にっこりと笑い飛ばす十四松くんの様子に、私は先ほど考えていた事まで吹き飛び、十四松くんと一緒に顔を見合わせて笑い合った。

食器とケーキ作りに使った器具を洗いながら「また一緒に作る?」と聞いてみると、十四松くんは「ううん!」と返事を返した。

え? と思って思わず後ろを振り向く。
やっぱり、嫌われた?
その思いが捨てきれないまま、私は泡だらけのスポンジとヘラを握りしめる。


「俺ね、なまえちゃんの誕生日にケーキ作るんだ! だから今日教えてもらったの!」

「……そ、そうだったの?」

「うん! なまえちゃんの誕生日もうすぐだもんね! だから、サプライズなんだ!!」


ああ、なんかもう感動しかないや。
変な事考えていた自分を恥じるくらい。
そっか、私の誕生日もうすぐだもんなー。

そう思った後、十四松くんの放ったとある言葉をまた私は疑問系におうむ返しした。


「サプライズって?」

「っあー! 言っちゃった! 言っちゃった! やっべー内緒だったのに言っちゃった!!」


その場でしゃがみこみ、頭を抱えて「やっちゃったー!」と叫ぶ十四松くん。
その姿が可愛くて、愛しくて。

私はふわりと笑って言った。


「ケーキ、楽しみにしてるね!」



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