小説 短編 | ナノ
01
「また女の子連れてるよ?」

「……うぅ、もうダメだ! どうせトド松くんは私の事なんか眼中にもないんだよ〜!」

「弱気になるなって……」


友人に声をかけられ、窓の外を見る。
そこには、私が高校時代からずっと片思いして来た松野トド松がいた。

__傍らに女の子を連れて。
しかも3人も。
そして皆可愛い。

トド松くんはいつも誰かとデートしてる。
だけれど私とはデートしてくれない。

これは完全に脈なしだな、なんて自分でも分かってるけど心のどこかで「きっと私とのデートは恥ずかしいんだ!」なんて可能性が私の中で捨てきれずにいるのも事実。

カフェと言う公共の場だと言うのに、私はパフェと紅茶を端に寄せ、テーブルに突っ伏した。


「あーもう、トド松くんのばか〜」

「でも、好きなんでしょ?」

「当たり前だし〜」

「はは、ほんと一途だねなまえは。私だったら絶対他の道に行くね。もう何年だっけ?」


友人の言う「何年」と言うのは、言葉から察するにきっと「私がトド松くんを好きになってから」と言う意味なのだろう。

私は突っ伏したまま顔だけを上に向けて「もう6年! もう6周年!」と言って指で6の数を作ってみせる。


「ひゃー、なまえって結構乙女だよね」

「そんな可愛い表現私には似合わないって……はぁ……もう6周年なんだよ? 長くない?」

「長い長い、高2からだっけ?」

「そーそー」


なんて、友人と会えばする会話は主に私の恋の話と友人の彼氏の話と言う恋話ばかりだ。

紅茶を一口飲み、窓に目を向けるとベンチに座っているトド松くんが見える。

そして3人の女の子も。
トド松くんが真ん中で挟まれて座っている。
……見るのはやめよう。


「あー私もデートしたいー!」

「なら誘えばいいじゃん」

「それがダメだから言ってるの! そんな勇気私にあると思う? ないでしょ? だから何とかして協力してよお願い恵!!」

「……なまえってトド松くんの事になると、饒舌になるよね」


図星を当てられ「うっ」と声を漏らすが、それも無視して友人の恵に頼み込む。


「お願い! デート出来るように手伝って!」

「まぁそれは面白いからいいけど、私は何をすればいいわけ? 特に私はトド松くんと仲良くないよ」

「でも高校時代はまあまあ話してたでしょ? 私ね、作戦というかプラン立ててきたの。聞いて」


そう言って、別に周りに聞かれてもいい内容なのに友人の耳にヒソヒソと話す。

一通りその内容を話し終えると、友人はコーラフロートを二口飲んでから言った。


「なまえらしいね」

「……それどういう意味?」

「いや、少女漫画脳だなーと」

「バカにしてんなそれ!」

「すいませーん、でも本当じゃん」

「い、言い返せない……」


トド松くんとLINEをしている時。
トド松くんと2人で話している時。
トド松くんと一緒にいる時。

どれも凄く楽しいけれど、友人とこうやって話すのもどれも凄く楽しい。

時々うまくいかない時、別に友人と話していればいいかなーなんて思ってしまう時がある。

結局その考えも、友人の彼氏の話を聞いていると「やっぱそれじゃダメだよね」と思う。

……そのループなんだ。



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