03
「あー! かかっちゃう!!」
「わっ……!」
シャワーの向きがこちら側にぐるんと回ったかと思えば、私に向かって冷たい水がかかった。
はずなのだが、私の身体にはそんな感触は感じなかったが、それでも何故か全身が冷たい。
「じゅっ十四松くん!?」
「危ないねーかかるとこだったよ! 水!」
「え? そ、そうなの? ありがとう……」
冷たい水をかぶった十四松くんに抱き締められ、そのヒンヤリとした温度が伝わってくるようだった。
「あっそうだ、止めなきゃ! 本当にごめんね! えーーっと、あれ? 閉まらない……」
未だにシャワーから出続ける水は、とりあえず湯船に溜めておくことにしたので、それは湯船の底についている。
だが一向に止まらない水。
あー、水道管の故障かなぁ。
「故障だと思う、ごめんね? 確認してはずだったんだけど……!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!!」
「でも冷えちゃうからあったまって……あー」
冷えた身体を暖めて貰おうと思い、湯船に浸かって貰おうとしたが、先ほど大量の水が発生したため、お湯はぬるま湯になっていた。
「……ごめんね」
「いいよー、なまえちゃんあったかいから、なまえちゃんに抱きついてればいーや!!」
「なっ、ちょっ!?」
……本当に、こういう事素でするんだから。
期待しそうになるんです。
好きな人に抱き締められ、私の思考が冷静なわけもなく、頭の中はパニック状態だった。
「十四松くん……そろそろ!」
「え? もしかして……嫌だった?」
「っ嫌じゃない! ……けど」
「けど?」
「な、何でもない!」
言えるわけがない。
貴方が好きだから、抱き着かれると照れる。
そんな事、口が裂けても言えそうにない。
「……とりあえずそろそろ服着てね」
「あ、俺ずっと裸だった! やっべ!!」
「はぁ……私以外の女の子に今日した事みたいなやつはしちゃダメだよ? 怒られちゃうからね!」
「でも、なまえちゃんは怒んないよね。何で?」
「〜っ鈍感!」
「え?」
ああ、本当に鈍感だ。
私はバスタオルと服をポカーンとしたままの表情の十四松くんに押し付け「十四松くんの服は洗濯しちゃったから、私の服着てね」と伝えてからリビングに戻った。
……はぁ、今日は厄日なんだか良い日なんだか。
兄弟がいたらこんな感じなのかな。
同い年だけど、十四松くんは弟っぽい。
そうだよ。
あっちが私の事をそう言う目で見ないのなら、私もそう言う目で見るのを止めよう。
……今日だけ、今日だけ姉だ。
私は笑顔で抱きついてきた十四松くんを精一杯お姉ちゃんのように抱き締めた。
(十四松兄さん遅いよ!)
(焼きそばなくなっちまうぞ)
(……うん、ごめんね)
(((((!?)))))
(あいつどうしたの?)
(さぁ…えらくニヤニヤしてんね)
(めっずらしー)
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