現パロ

初めはなんてことない唯の遊び。

「ずっと好きです」

すと女の口から流れるように出た言葉に、ほぅ…と眉根をあげた。
女としては敏い同僚はそっちの方には枯れていると思い込んでいたからだ。まさか、自分を好きだとは思わなかった。しかもずっとという不特定で長い時間もだ。
面白そうだと、気まぐれに付き合いを始めた。だが、女を大事にしようなぞ微塵も思っていなかった。

それから、女を自分がその気になる時だけ呼び出し抱いた。睦言もなく恋人と呼ぶには憚られるような薄い仲だった。しかし、女は文句ひとつ言わない。行き釣りの女と寝ていたとしても、優しい言葉をひとつも掛けなくとも笑っていた。

「貴方にはいつも尽くして貰ってばかりだったから、だから私が今度は尽くす番なの」

遠い目をしながら思い当たらない話をする女を何故だか懐かしく思った。

ある日、雨が降った。
生憎、傘を忘れてしまった。帰りに適当な女を誘い、雨宿りでもしようかと考えたが止めた。今日は家にあやつがいたな。そう思うと、体がすでに帰ろうと動き出す。あの女の遠くを見る表情を思い出すと、なぜだか体が早く早くと急ぐ。
濡れ鼠で帰路に着くと、女は驚いた顔をしていた。そして、綺麗な髪が台無しね。と自分の髪を撫で笑う。

あぁ、それは。何故。

女の言葉と笑みが脳に木霊して、もう一人の影を生む。昔、遠く昔にその言葉を聞いた。

そう、女は、自分の、たった一人の……

「あ…るじ、さま……」

あんなに大切な人の清い思いを自ら穢した。

ゆるしてくださいあるじさま


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