短い。


朝からなんだか良くない気がしたから、その場所に行ってみたら主がいた。よくよく主を見てみると背中に憑いている。
たくさんの猫の霊が。

うちの本丸は何故かよく猫が迷い込む。
塀にでも穴が空いているのか、猫が1匹、2匹と入ってきては本丸に住み着くようになる。主は生粋の動物、特に猫好きだからか来るもの拒まずだ。
そんな猫本丸化したこの場所には、現在10匹ほど猫がいる。今は落ち着いた数で、つい二、三年前は本丸の刀剣男子よりいた時期があった。その際は夜中にうるさくて仕方がなかった。
話は逸れたが、主の背中にじゃれるように猫が3匹ほどいる。さて、どうしようか。

「おはよう青江。なんだい?背中をじっと見て」
「おはよう主。……背中に憑いているよ?」
「え、付いてる?」

やだなー埃?と言いながら、主は自分の背中を手で払う。すると、背中にいた猫の霊が主の手にじゃれる。和むような光景だが、生きている猫ではない。いくら可愛らしく無害でも現世に留まり続ける霊はあまり良くない。

「青江ー?取れた?」
「いや、じゃれてるよ」
「???」

猫がいるよ。と言うと主は不思議そうに首を傾げた。審神者をやっているが主は霊的な物が一切見えない。僕ら刀剣男子が見えるのは、補正眼鏡なるものをかけているかららしい。

「君の鈍感さも筋金入りだね」
「え?なに?」
「こっちの話だよ」

死んでもなお、主の側にいる猫。

「……今回は見逃してあげよう」
「??」
「猫の話だよ?」

見えない猫に手をかざすとほんのりと暖かかった。

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