ジュッと熱したフライパンに大根の葉っぱをどさっと入れる。葉の緑に艶が出てきたら、醤油をだいたい時計ひとまわり回し入れる。全体的に量が3分の2ぐらいになったら、湯切りして炙った油揚げを入れて完成。

「こんなもんかな…」

大根の葉と油揚げの炒めものを皿に盛り付けて、息を吐いた。
台所の机には冷奴に、アジの開き、夏野菜を刻んで麺つゆにつけたダシやもろきゅう、鰹のたたき、出汁巻き卵など所狭しと置いてある。

今日はみんなで飲もうか。と久々にお酒を飲みたくなったため、本丸一の飲んべぇの次郎ちゃんに言うとさっそくお酒の買い出しに行った。道連れに御手杵と田貫としょっきりこと燭台切光忠をラリアットしながら連れて行ったから、荷物持ちとセーブ役は大丈夫だろう。
せっかく飲むんだからつまみも……と思い作ったら結構な量になってしまった。まぁ、短刀たちが食べるからいいかな。と思い振り向くと鳴狐が至近距離に立っていた。

「う、わぁ……びっくりした」
「……」
「どうしたの鳴狐」

少し後ずさりながら、彼を見ると肩にいつもいるはずのお供の狐がいない。いつもなら、やぁやぁこれなるは……と元気な声が聞こえるのだが。

「お供の狐はいないけど、どうかしたの?」
「……寝てる」
「へぇ」

どうやら午睡に浸っているらしい。鳴狐は寝ないのか。と聞くといい匂いに釣られてここに来たらしい。いつの間にか、ちゃっかりお箸をスタンバイしている。

「鳴狐は案外食いしん坊だよね」
「そうかな…?」
「いつもご飯三杯はぺろっと食べちゃうじゃん。どこにそんな量入るの?」
「お腹」
「いや、違くてさ」

うちの本丸のエンゲル係数をぐいぐい上げている骨喰と鯰尾に並んで、鳴狐はよく食べる。特に彼の好物が出たときは凄まじい。美味しく食べてくれているなら構わないけれど、食べてその体型は羨ましい。
小皿に適当につまみを盛り合わせて、鳴狐に手渡す。

「はい、どうぞ」
「ありがとう…」

パコッと顔の面を外し、もっもっと食べる彼からは心なしか桜が舞っている。台所が桜色になっちゃうでしょ、とか食べるときに桜がでるって。とか思いながら、料理に冷めないようにラップをする。さて次郎ちゃんはいつ帰ってくるだろうか。…樽でお酒を買ってないといいけど。
ラップをかけ終わり、今度は皿洗いをしようと流台へ向く。そのついでに鳴狐の使った小皿も洗いたいと、彼の方を向くと先ほどかけたばかりのラップを剥がしてモグモグしている。

「……」
「……」
「鳴狐」
「…」
「なんで大根葉と油揚げの炒めものだけ、半分ぐらい無くなっているの?」
「……美味しかった」

目をそらしながらも、お箸だけは皿と口を行ったり来たりしている。もうすでにお皿の中身は三分の一まで減っている。そんなに美味しいか、流石油揚げ。


この後、追加で油揚げのつまみを作ったらまた食べらたので鳴狐はしばらく台所に立ち入り禁止にした。

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