短い話。


今日は久々に遠征組から出陣組へと編成され、更には隊長まで任された。柄にもなく浮き足立ちながら、出陣の詳細を聞こうと襖から主へ声を掛ける。

「失礼します主」
「一期……?あ、痛っ」
「一兄入ってくれ。大将は今ちっと動けねぇんだ」

どうやら薬研もいるらしい。
そういえば手入れ部屋を増やすか相談すると言っていたな。と思い襖を開ける。

すると、主と薬研が、顔を寄せ合って……。


「何をなさっているのですかな?!」
「えっ」

せ、接吻を交わしていたらしい主と薬研を、自分が持てる機動を出して勢いよく離した。破廉恥な!
何故そのような事をしていたか訳を聞こうと、部屋の隅に薬研を連れて行き、顔を向き合わせる。

「おいおい一兄、いきなりどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも!……ごほん、主に顔を寄せてなにをしていたんだ?」
「怒ってるのか?ただ大将に頼まれて…」
「主に頼まれて?」

主が?短刀の薬研に?
驚き思考が停止しかけたが、主が女性という観点から見ると辻褄が合うのでは。と閃いた。
女性は寂しがりと聞いたことがある。もしかすれば、主はこの本丸で拠り所が欲しく薬研へすがったのでは……?
そこまて思い至たったがしかし、弟を相手にされるのは困る。まだなにか言っている薬研から、困惑気な主へ向き合う。

「主…」
「は、い。えっと…一期?」
「私がお相手します故……どうか、弟は見逃してください…」
「ふぁ!?!?」
「ぶふぅ!!」

頭を下げると、前から不思議な叫びと後ろから笑いがこみ上げて我慢しようとしたが噴き出したような声が上がった。


その後、薬研が
「大将の目にゴミが入っちまったのを頼まれて取っていただけなのに、一兄が下世話な勘違いして身売りみてぇなことを大将にしちまった」
と酒の席で笑いながら語った。

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