▽ 28
「バカだバカだとは思ってたが...本当、同じ人間なのかと疑いたくなるな」
「愛都はすごく魅力的だから、皆考えることを放棄しちゃうんだ」
愛都の嘲笑に綾西は頬を赤く染め、ひたりと体を密着させる。
そうして伝わってくる体温に愛都は眉を引くつかせた。
「体痣だらけにして、血滲ませてさ。よく平気で性欲が高まるもんだ。あいつMじゃないか?あれはもうすぐダメになる」
「...早く死ねばいいのに。汚い体で愛都に触りやがって...」
「それは無理だな。あいつ結構タフだから。でも...―――再起不能にはなるかもな」
会うたびにボロボロに汚れていく香月に以前のような輝きは存在していなかった。
あるのは欲望だけ。ただただギラつく瞳で愛都のことを見つめていた。
一度のリンチで一回の性行為。ただし、最後から一週間経てばその約束は白紙。香月が愛都に触れることのできる機会はなくなってしまう。
自分の身を可愛がればいいものを、中毒者へと成り果てた香月は傷ついていく自身に目もくれず、本能のままに動いていた。
そんな香月の傷の手当ても愛都はしてやった。...―――簡単には死なせない為に。
目には目を、歯には歯を。暴力で物事を解決しようとする男にふさわしい復讐だ。
自分より下等だと思ってたやつらに暴力をふるわれて、自分自身は反抗もせずにされるがまま。
― タフな野郎は身体的に追いつめるのが先だ。そして精神面を追いつめるために...
「一気に堕としてやる」
人は誰しもが依存者だ。その対象がなくなった瞬間、皆絶望する。
「綾西...お前は俺がいなくなったらどうする....死ぬか?」
ソファの上でひっついてくる綾西にそう問う。綾西はそれに対して大きく肩をびくつかせた。全身を硬直させたのが、分かる。
そうして腕に痕がつきそなほど強くしがみついてきた。
「俺、は...―――」
「...もしもし?あぁ、今日か。いいよ、ちゃんと証拠を見せてくれるんならね」
何かを言いかけた綾西。だがその続きは愛都が電話に出たことによって途絶えさせられた。
「で、今回はどんなことされたの?何か新しいことはあった?」
電話をしている愛都の手にはいつの間にかカメラのフィルムが握られていた。それは前回受け取ったリンチ現場が写ったもの。カメラのフィルムはいつももらっていた。...証拠として。そして、観賞として。
現像した写真を見ればひどく、興奮した。
「へぇ。腕、折ってもらったんだ。すごいじゃん、じゃあ、今日は俺が上に乗って動いてやるよ。ハハッ、お前も興奮するだろ?」
会話を聞いていた綾西は憎しみをこめた瞳で愛都の持つ携帯を睨んでいた。
その時、愛都は口角を上げ、おぞましい笑みを顔に浮かべていた。
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