▽ 25 〃
視界に捉えるのさえ許すことができず、閉じる瞼。
途中からドサリ、と何かが倒れる音がしたかと思えば、次には先ほどよりもひどくなった愛都の喘ぎ声が聞こえてきた。
...騎乗位でいた愛都が押し倒され、綾西に覆い被さられているのであろう、ということは容易に想像できた。
「...ッ、」
歯を食いしばればギリリと嫌な音が鳴った。怒りはあふれ出るのに首から下はやはり自由が利かない。どんなに力を込めても動けないのだ。
― どうしてなんだ...っ!!なぜ愛都が綾西とヤってるんだ。あいつは俺のことが好きなはずなのに!どうして俺に薬を盛ってわざと目の前で...!!
冷静に物事を考えることも、当然のことながら出来なかった。頭の中では怒りと疑問ばかりがグルグルと回り続ける。
「どうしてか、わからないだろ」
「...っ、!」
その時だった。突然、すぐ近くで冷徹なその声が聞こえたのは。
そして再び瞼を開ければ、何とも扇情的な光景が眼に焼きついた。
「なぁ、お前もヤりたいんだろ?」
なにも身に纏わない下半身。白濁がついた性器と内股。
適度に引き締まったその体からは色気が溢れ出ていた。
「...てめぇ、ッ!」
体についている白濁は愛都のものと、きっと綾西のもの。だが、近くに綾西の姿はなかった。美術室には愛都と香月の2人だけ。
「俺を裏切りやがったな、」
今だ動かない体。欲望が渦巻く中、発した言葉は失望の声。しかし、返ってきたのは...
「 裏切るも何も、俺は最初からお前の信頼も期待も全部受け止めてきてないんだけど 」
そう言い、微笑む顔には黒い影が落ちていた。
「お前...ッ、」
「何、もしかしてその口で愛でも説くつもり?お前は俺を愛してただろって...―――自分のしたこと、忘れたつもりかよ。俺がお前のことだけ覚えてないとか、都合良すぎだろ。俺は悲惨な記憶を忘れるほど...神経細くねぇよ?」
言葉はもはや出なかった。香月は先程までの怒りもすべて飛び、驚きで目を見開く。そして大きく開いたその黒い瞳には、本当の愛都の姿が写った。
― 全部...全部全部全部、演技だったって...言うのかよ。――― 俺をこんなんにしておいて。
それでも香月の下半身は未だに固く張りつめていた。
すでに心と体は分離し、体は欲望に忠実であった。目の前にいるのは中毒となった元凶。依存しきった香月にとってそれは生半可に堪えられるものではなかった。
「辛いだろ?ここも...――― ここも、」
「...くッ、」
愛都は香月の胸を指差したかと思うと、次には熱くなった性器をズボン越しに握りこんできた。ただそれだけのこと。しかし、それだけで香月はイキそうになってしまった。
「挿れさせてやるよ...俺も、鬼じゃない」
「まな、と...」
荒くなる息遣い。香月の瞳には熱が籠る。
「でも1回だけだ。お前が1回出したらそれで終わり。」
「長くヤりたいなら、せいぜい我慢することだな」クスリと笑うその表情は悪魔そのものだったが。とても魅力的な誘惑だった。愛都と最後にヤってからしばらく経つ。久し振りのことだった。
今香月が欲しいのは、先程まで綾西が犯していた穴。綾西の白濁がついた穴。香月のモノを強く締め付ける...愛都の中。
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