君のため | ナノ
 5



 「あいつは手加減ってものを知らないのか、」

 鈍く痛む腰に無理をして部屋まで戻り、シャワーを浴びる。

 穴から出てくる白濁が酷く不快だった。
 他人の体液が自分の中にあるというのが嫌で、すぐに指を入れて掻きだす。そして数度うがいをし、口内の気持ち悪さも吐きだした。

 ― 薬も何も使ってない状態でよく男に欲情なんかできるな。

 女っ気が全くないと仕方のないことなのかもしれないが...それでも俺には理解できない。

 まぁ、そんな理解しがたい行動のおかげで俺の計画に上手く香月はハマろうとしているのだが...

 「愛都君、いる?」

 脱衣所で服を着ていれば、軽いノックのあと、ドア越しに沙原の控えめな声が聞こえた。

 帰ってきた時、運良く沙原は部屋におらず、そそくさと愛都はシャワーを浴びていたのだが...きっと今タイミングよく帰って来たのだろう。

 「あぁ、いるよ。ちょっとシャワーを浴びてたんだ」

 すぐに着替えを終え、脱衣所の扉を開ければ無表情で愛都を見る沙原と目が合った。

 「沙原く――― 」

 「今までどこに行ってたの?」

 名前を呼ぶ、愛都の声を遮って沙原はそう問いかける。

 「少し用があって出掛けてたんだ。心配をかけていたなら謝るよ、ごめんね」

 「用って何?誰に会いに行ってたの?何を話してたの?誰かそれを証明できる人はいる?」

 「...沙原君、」

 「僕、愛都君を探してたんだ。心配で...心配で心配で心配で、」

 眉を下げ、悲しげに笑う沙原。よく見れば沙原は息が僅かに上がっており、頬もほんのりと赤かった。
 もしかしたら、帰って来てからずっと俺の姿を探していたのかもしれない。

 「前に愛都君言ってたよね?寮の部屋に帰ったらたくさん話をしようって。だから僕、待ってたのに愛都君、すぐに帰ってきてくれないんだもん。ねぇ、教えてよ、放課後から今までの時間の行動...全部、」

 漸くニコリと笑った沙原。だが、その笑顔もどこか歪んで見えた。
 最近見えてきた沙原の素。日に日に増す歪みに愛都はため息を吐きだしそうになった。
 ある意味一番沙原が厄介な性格かもしれない。

 「少し、落ち着こう沙原君。探してくれて、ありがとう。沙原君にそんな心配してもらえて...すごく幸せだな、」

 「...あっ、ま、愛都君...っ、」

 自分よりも低い身長の沙原を優しく抱きしめる。華奢な体は腕の中にすっぽりとはまった。

 「疲れたでしょ?あっちで休もうか」耳元で囁き、撫でるように背中を触れば沙原は肩をビクつかせる。

 「愛都君...愛都君、」

 愛都の胸に顔を擦り付け、抱きしめ返してくる沙原。

 太股にあたる主張し始めた沙原の昂り。

 愛都はそれに対して気付かないふりをした。





 「愛都、どこに行くんだよ。授業サボるんなら俺も一緒にサボる」

 「ダメだ。お前はここにいろ」

 「でも...」

 授業が始まる3分前。愛都の携帯には叶江からの連絡がきていた。
 要件は一言“屋上に来い”とだけ。

 べたべたとひっつく綾西を置き1人屋上へと向かおうとしていたのだが...

 どこに行くのか、誰に会いに行くのかと、内容をしつこく聞いてきた。
 てきとうに答えても、ついていくと言い張るばかりで中々言うことを聞こうとしない。

 かといって、捨てるぞ、と脅しをかけでもしたらこんな公共の場で泣きつかれてしまうだろうということは目に見えている。
 
 そんなことになってしまえば、一気に人が集まって状況は悪化するばかりだ。

 しょうがない、と肩を下ろした俺はあたりを見回し、人気がないことを確認する。

 「ねぇ、愛都教えて...―――って、え...んんっ!」

 綾西の頬に手を添え、押しつけるようにして唇を重ねる。
 戸惑っている綾西のあいた口の隙間から舌を入れ、中を蹂躙すれば綾西のくぐもった声が耳の中を通っていった。

 「ふっ...ぅ、ん...んん...っ、」

 綾西は漸く状況についてきたのか、リードをつかもうと責めてきた。
 強く吸われる舌。上顎を舌で擦られ刺激される。
頭にまわされる手の力は強まり、キスはどんどんと深まっていった。

 どちらのものかもわからない唾液が口腔にたまり、思わず吐き気が込み上げた。

 キスに夢中になり、愛都の唇を貪る綾西の胸を叩くが、気がついていないのかそれともわざとか、綾西は構わず行為を続ける。

 終いには腰に綾西の主張し始めたものを擦りつけられ...

 「ひぃ゛っ...あ゛...っ、」

 「調子に乗るな。ほら、早くお前は教室に戻れ」

 愛都は綾西のそこを強く握り締めた。
 途端、綾西は目に涙を浮かべ、強く握られたそこをおさえる。

 「もし何かあったら連絡する。その時はすぐに俺のところまで来い。」

 「...ぅ...わかった、」

 痛みの余韻があるのか、掠れた声を出す綾西だったが、先程のキスのことも頭に残っているのか表情は恍惚としていた。





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