▽ 12※
「...ふっ、う...ん゛んっ、」
目の前にいる馬鹿な綾西は大嫌いな俺の目の前で下半身を晒し喘いでいる。
声が煩くてとめた口元のガムテープは剥がすとき痛そうだな、なんてぼんやりと思った。
「もう、いいよな。俺もあまりこんな汚い所触ってたくないし」
俺は綾西の尻の穴に入れていた指を抜き、替わりに左手に持っていたものを穴の縁にひたりとあてた。
「ん゛ん――っ!ぅ...ん゛っ!!」
「...うるさいな。いつも誰かにやってるんだろ?たまにはヤられる側の気持ちも知っておけよ」
そう言い一度持っていたもの...極太のデイルドを穴から離し、綾西の頬に擦りつけた。途端、悲鳴のようなくぐもった声を出す。
綾西はそれから逃げようとするがうつ伏せの状態で両手首も縛られているせいであまり抵抗もできないでいた。
「精々楽しめるといいな」
「...ふっ...ん、ん゛っ!!う゛、ん゛――っ!!」
そしてたいしてほぐれてもいない穴にもう一度近づけると一気にデイルドを中に突き挿れた。
瞬間つんざくような綾西の声が部屋中に響き、俺は大きな高揚感で包まれた。
めりめりという肉の音と、きつい中にデイルドを挿れる感触。太股には尻の穴から垂れてきた赤い液体が一筋流れた。
綾西のそこは痛みから縮こまっており、顔は涙や鼻水でグシャグシャになっていた。
汚い汚い綾西。哀れだ、非力だ、滑稽だ。
ゾクゾクとする心情。
苦しめてやる。追いつめて追いつめて辱めて、お前の光を奪ってやるんだ。
―― 俺が奪われたように
愛都は目を伏せ、微笑した。
「はっ、あいつに下剋上なんて無理だな」
後ろから聞こえるバイブ音や綾西のくぐもった声に振り返ることもなく俺は居間の扉を閉め、玄関へと向かった。
今の綾西は俺が飲ませた媚薬の効果によって、痛みに震えながらもわずかに快感を感じ取っているのか時折気持ちよさそうに眉をひそめていた。
あの分じゃ、あと少ししたらもっと媚薬が体に回って痛みよりも快感が勝るようになるだろう。
しかも多分その二重の苦しみから逃げられるのは媚薬の効果が身体から抜けきってからだ。
それじゃないと身体に力が入らず、デイルドを自分で取り出すこともできない。
...なぜそれを俺がわかるのか。それは...
ズルズルと壁づたいに崩れ落ちていく身体。そう、自分自身であの媚薬の効果を体感しているからこそ、分かるのだ。
綾西の前では精神力だけで保ったようなものだった。
自分自身、媚薬が効きにくいのは嫌なことに叶江によって分からされていた。叶江と関係を強要されていたときに何度か使われたのだ。
まぁ、そのおかげで今回はなんとかすることができたのだが...
それでも少しの刺激で快感を感じ取ってしまう今の身体で綾西をどうにかするのはひどく困難だった。
それは時間が立つごとに酷さが増し、これ以上は平常ではいられないという限界にきたとき、俺は部屋を出た。
綾西は俺には媚薬があまり効いていないと思っているだろう。この...今の俺の状態を目にしていないから。
こうなることが分かっていて少量しか飲んでいなかったのだが、それさえもすぐに吐き出してしまった方が良かったのかもしれない。
ここまで効果があるものだとは思わなかった。
きっと媚薬は叶江から買ったものに違いない。じゃなきゃここまで効果のある“本物”の媚薬を綾西がもっているはずがない。
―だけどまぁ、綾西をさらに追いつめるための道具を手に入れることができた。これは重要なものとしてこれから使える。
俺は小型のカメラがズボンのポケットに入っているのを一度確かめるようにして触る。
これは綾西がもっていたものだ。あいつはこれを使って俺の弱みを握ろうとしていたらしいが、そう易々とやられるつもりはなかった。
馬鹿な綾西。分かりやすくて、扱いやすい男。―― 叶江とは大違いだ。
あの何を考えているのかよくわからない男。先手をとろうとしても逆にいつも取られてしまい先に回られる。
恵 叶江は一番憎い男だが、一番読めない奴だ。
「...ぁ、クソ...っ」
そろそろとわかりやすく主張しているそこへと手を伸ばす。
上手く力が入らず、もたもたとベルトをはずしチャックを下ろした。
このまま我慢していても埒が明かない。いるかどうかは分からないが、綾西の同室者が来ても困る。
1度か2度出してしまえば少し落ち着いて体の自由が効くようになるはずだ。
さっさと処理として終わらせてしまおうと下着の中に手を入れかけた時、目の前の扉がガチャリと開き、暗い廊下に明るい光が入ってきた。
「...っ」
―やばい...同室者か。
俺は扉の方を見たまま固まり、ごくりと唾を飲み込んだ。
ここから動きたくても体が動かない。媚薬のせいで頭もうまく回らない。
「おい、泰地いるか...って、お前...」
「チッ...」
閉まる扉。玄関で立ち尽くす、香月の姿。
やってきたのは想像していたよりもずっと厄介な人物だった。
香月は俺の姿を確認するなり目を見張り俺同様固まってしまった。
面倒な来訪者に俺は思わず舌打ちしてしまう。
香月に対してはある計画から素での対応はせず、演技のまま接していた。
せめて来るのが永妻であればこの辛い状況で演技しないで済むだけ面倒ではなかったのに。
しかも暴力的で自己中な香月だ。何をされるかわかったもんじゃない。華奢で非力な永妻とは大違いだ。
「千麻お前...泰地は、どうした」
香月は俺の状況を見て、顔を強ばらせていた。
それもそうだろう。俺が綾西の所へいってくるといって部屋を出てから随分と時間が経過している。
だからまさか俺がまだ綾西の部屋にいるのだとは思いもしなかったのだろう。
しかもそれに加え今の俺は普通の状態ではない。媚薬のせいで身体がおかしくなってしまている。
ズボンのベルトは外し、チャックは下げられている。
傍から見てもこれから俺が何をしようとしてたかは一目瞭然だ。
そんな中いっこうに姿を現さない綾西の存在を心配するのは当然のことだろう。
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