▽ 11 〃
「これ、すごくおいしい。綾西でもコーヒーを上手に作ることができるんだな」
「...ぁ、ははっ。俺だってこれくらいできるしぃ」
千麻の呆気ない言葉に俺は今度こそ胸を撫で下ろした。そして横目に、ソファに座ってカップの中身をすする千麻を見る。
よし...計画通りだ。あとは千麻に媚薬が効くのを待つだけだ。その後は犯ってあいつの顔つきでハメ撮り写真を撮って...
それを脅しの材料に使えば俺は主導権を握ることができる。
「それじゃあ、ちょっと着替えてくるね〜。あ、話したいこともあるから俺がいない間に勝手に帰らないでよ?」
「わかった。黙ってコーヒーでも飲んで待ってるよ」
微笑し目を細める千麻。その余裕な顔ができるのも今だけだ。
これから起こるであろう出来事を想像して、俺は心の中でほくそ笑んだ。
寝室に行き、制服からラフな部屋着に着替える。そしてスウェットのポッケに小型のカメラと使い切りタイプのローションを入れる。
「ゴムは...あー、こないだ使い切ったんだ」
まぁ、無くてもいいか。逆にナマの方があいつの嫌がる顔が見られそうだし。
全ての準備を終え、時計を見れば部屋に来てから10分弱経っていた。
即効性だと言っていたしもうそろそろいい感じだろう。
部屋の扉を開け、居間の方を見れば先ほどとは違い、力なくソファの背に身体を預けた千麻の姿が見えた。一歩一歩ゆっくりと歩いて千麻に近づいて行く。
「...おい、千麻...」
その掛け声に応える声はなく、少し荒い呼吸音だけが聞こえた。
机の上にあるカップの中身はほんの一口二口残っているだけ。...ということは結構な量の媚薬を摂取したのか。
千麻の前に立ち、顎を持ち上げこちらを向かせる。千麻は苦しげに瞑っていた瞼を僅かに上げて俺の方を見てきた。
「あや...にし...」
上気した頬に掠れた声、苦しげな表情。それら全てが何ともいえない深い色気をはなっていて俺はごくり、と喉を鳴らした。
「あはははっ、ねぇ苦しい?...いつもの余裕もないようだね...」
「...はっ...んんっ、やめ...っ」
顎を掴んでいた手を離すことなく、そのまま唇を重ね熱くなった舌を吸えば、さらに千麻は頬を赤らめた。
空いている方の手で千麻の主張しているそこを触れればすごく敏感になっているのか、苦しげに眉を寄せる。
「きついでしょ〜?ラクにしてほしい?」
千麻を押し倒そうとソファに片膝をつき、肩に手を掛ける。
「ん...っ」
「ははっ、呆気ないなぁ...」
もう俺の中に千麻に対する恐怖はなかった。
あるのは、こいつに対する支配欲だけ。
―――と、思っていたのに
「本当...バカだな、お前は」
急に肩に置いていた手を掴まれ、俺が事態を把握するよりも早く引き寄せられる。
頭が回らないまま勢いを抑えることもできずにソファの上に倒れた。
「な、なんでお前...」
いつの間にか形成は逆転し、俺は弱り切っていたはずの千麻に跨られていた。展開についていけず、言葉が詰まってしまう。
「ぜ、全部...演技だったの、かよ」
「あー、半々かな。あのコーヒーになんか入ってるのは知ってたけど、お前を騙すために飲んだから一応俺の身体普通の状態ではないし」
「それだったら、ほとんどの量を飲んだんだろ?カップの中にはもう...」
そう、カップの中身はもうほとんど残ってなどいなかったのだ。あの量を飲んでいれば演技なんかする余裕なんてないはず。
「素直にあの量を飲むわけないだろ。そこの窓から外に捨てたよ。もしかしたら誰か運悪くその下を歩いてて頭からぶっかかったかもな」
千麻はクックと笑い、光の無い死んだ目のまま服の下に手を入れてきた。
「な、何すん...っ」
「はっ、綾西、お前もうずっと素が出てるよ。隠してるんだろ?取り繕わなくていいのか」
「うるせぇ!バカにしやがって、」
抗おうと千麻の胸を強く押すが、体勢が不利なせいで上手く抗うことができない。
それにしても...こいつには媚薬がちゃんと効いていないのか?そう思いはするも、千麻の赤く染まった頬や主張しているそこを見る限り、別段効いていないというわけでもなかった。
「ふっ...んんっ、な...っ」
急に鼻をつままれそのまま唇を重ねられた。驚きで開いた口内に何かの液体が千麻から流れてきて俺は息苦しい中それを飲み込んでしまった。
「今のって...」
「お前が俺に出してくれたコーヒーの残り。...媚薬入りのな」
千麻の手にあるのは先程までテーブルの上にあったはずのコーヒーカップ。その言葉を聞くなり固まる俺を無視して千麻はスウェットと下着を一気に脱がしてきた。
ひんやりとした空気が下半身を覆い、俺の顔は羞恥心で赤くなった。
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