君のため | ナノ
 9



 「愛都君身長高いし、筋肉も均等についててすごくきれいな体だねぇ〜。でも肌白くてエローい」

 「つーか、恵お前痕つけすぎじゃねえか?」

 「はっ、愛都は俺の犬なんだ。当たりまえだろ」

 太股に感じる指の感触。指が太股の際をなぞるたびにもどかしい気持ちになり、ビクつく自分の体が嫌で嫌で堪らなかった。

 「んッ、は...。あはは、愛都君の顔いいね。なんか僕興奮しちゃうよ」

 「...ッ、はぁ、は...」

 漸く唇が解放され、酸素を求めるように荒い呼吸を繰り返す。

 先ほどと違って欲情しきっている目をした永妻に俺は心底嫌気がした。

 「...っ、んんっ!!...ぁ、痛っ、」

 突如訪れた下半身への痛み。
後ろの穴に無理に入ってくる指によって引きつるような痛みが生まれる。

 「...きっつ。恵とヤりまくってるくせに締まる...」

 香月は俺の太股を掴むとグッと前の方に押し曲げ、指が入りやすいように俺の体勢を変えてくる。

 その体制が苦しくて口からでかけた言葉もつまってしまう。

 叶江と何度ヤろうとも慣れないこの行為。
 ましてや香月の場合、ただ慣らすためだけの機械的な動きのため、俺に訪れるのは苦痛だけで快感などは微塵も感じられなかった。

 「うわ〜、すごい萎え萎えじゃーん。かわいそうにね。俺が高めてあげるよぉ」

 「ひっ、ぃ...ぁ、やめっ」

 俺の横に来た綾西は笑いながら俺の萎えたそこに手を伸ばし、ユルユルと上下に扱いてくる。

 徐々に高まる快感の波に俺の頬は赤く蒸気し、息が荒くなっていく。

 不意をついて口からこぼれそうになる声を唇を噛みしめて堪える。
 わざとらしく聞こえる水音と自分のくぐもった声がやけに大きく頭の中でこだました。

 「...う、あっ...嫌だ、く..ぅ、」

 俺の中から消える香月の指。そして代わりに押し付けられる熱い昂り。
 綾西の手が俺から離れ香月は先ほどよりも深く俺の体を曲げる。

 そのせいで香月のものが俺の後ろの穴に入ろうとしている、卑猥な光景が見え再び猛烈な嫌悪感が湧きあがってきた。

 なんで...なんで俺がこんな奴らに犯されなきゃいけないんだっ、

 しかし体勢が体勢なだけに体を少しも動かすことができない。

 「やめ、ろ...い゛っ、ぁ..ぅあ、あ゛あ゛ぁっ!!」

 「力抜けよ...動けねぇ、だろ」

 きちんと慣らされもせずに濡れていない俺の中に無理に入ってくる香月の熱い昂り。
 みちみちとなる肉の音、切れたのかその結合部から流れ、一筋の道を作る赤い液体。それは太股をつたい、腹まできた。

 鋭い痛みによってあがる俺の悲鳴染みた声も無視して香月はじわじわと奥へと入ってくる。

 「かわいそうに愛都君。涙が出ちゃってるよ」

 「...く...はっ、ぁ...あ゛ぁっ、」

 俺の目に溜まり零れ落ちていく涙を永妻は掬うようにして舐めていく。
 そのたびに荒い息が顔にあたる。

 「ん...締めつけ...やば...っ」

 体に触れる香月の腰。ついに香月は俺の中に全てを飲み込ませ、収めてしまった。

 香月の冷たい表情が恍惚とし、崩れていく。俺を見るその目には酷く欲情しきった雄が見え隠れしていた。

 「ひぃっ...あっ、動く...なぁっ」

 熱い吐息を出しながら香月はギリギリまで己を引くと一気に中を貫いてきた。
 その衝動に呼吸が一瞬止まる。

 綾西によって高められた俺のものはこの痛みで再び萎えてしまっていた。

 痛い痛い痛い。嫌だ、やめろ、気持悪い。俺から離れろ、俺に触るな!

 喉まで吐き気が迫り上がってくる。
俺の血が潤滑油代わりになっているのか、段々と香月の動きは大胆になっていく。
 容赦なく突き上げられ背や、肩が床に擦りつけられた。

 「は、っ...あっあっ、ぅ...くっ」

 抵抗という抵抗もできず痛みに耐え続けていると、限界が近いのか香月は俺に上半身を預け、結合部を深めると奥を抉るようにして激しく腰を打ちつけてきた。

 「はぁ...はっ、ん...」

 「んっ、ん゛ん――っ!」

 俺の唇に深く重なる香月の唇。
そして身体の奥深くでじわりと広がる熱いもの。

 ――中出しされた。

 感覚ですぐに分かった。悔しくて悔しくて、涙が一気に溢れだし頬をつたい床に小さな水たまりをつくった。

 俺の口内を舐めまわし舌を吸いながら、全てを出し切るように香月はゆるく腰を振り続ける。

 「はいはーい。和史変わって〜、もうおわったでしょ?俺、もう興奮しきっちゃったぁ。早く挿れさせてぇ」

 「えーッ、待って。次は僕に楽しませてよ。僕ももう待てないっ」

 綾西が声をかけることによってようやく香月は俺の唇を解放し、上半身を起き上げるとズルリ、と自分のものを中から出した。

 「お前、最高だわ...」

 そしてもう一度低くかがみ、耳元に近づくとかすれた声でそう呟いてきた。

 「...はぁ、は...死ね...クソ野郎っ...」

 荒い息を整えることもできず、乱れた呼吸を繰り返していた俺だが、それだけはちゃんと言い返した。

 すると香月はニヤリと笑み、未だ欲情しきった目で俺を見てきた。

 「は、おもしれぇ。....おい、お前ら二人でいっぺんにこいつを可愛がってやれよ。前と後ろでな」

 「お前、何言って...」

 「あっ!それいいねぇ〜、俺が後ろから突っ込んでぇ、晴紀は愛都君に突っ込まれてぇー。あははっ、楽しそう!」

 「うん、それならいいよ。すごく気持ちがよさそうだね」

 二人の言葉を聞くなり香月は俺の上からどき、代わりに綾西と永妻が近付く。

 「ン、やめ...う、あ゛あぁっ!」

 香月との行為で身体に力が入らず、簡単に綾西に抱き起こされてしまう。
 そして綾西は俺を後ろから抱き締め、座った状態で一気に中を貫いてきた。
 自分の体重も加わりじわじわと奥深くまで熱い昂りが入ってくる。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

 − 助けて、助けて。


 その助けは一体誰に向けたものだったのか。それは愛都の無意識の心の叫びであった。

 「熱くて気持ちいいっ、やば、い」

 「泰地、動くのはちょっと待ってね。今愛都君の大きくして僕の中に入れるから」

 「んんっ、早く晴紀っ、動きたいよぉっ」

 俺のすぐ耳元で聞こえる綾西の声。動いていないおかげでそこまでひどい痛みはまだなかった。

 「ぅあぁっ...ふ...んっ」

 突然訪れる強い刺激。下を向けば萎えた性器を口に含む永妻の姿が目に入った。

 手で扱きながら先端部を音を立てながらしゃぶられ、舌で穴を抉られる。

 「ふふっ、気持ちいい?晴紀、フェラ上手いからきっとすぐに勃っちゃうよ」

 嫌なことを囁かれ、俺は目をつぶる。
感じたくない感じたくない感じたくない。

 しかし、そう思うばかりで身体は快感に素直だ。
綾西の言う通りいとも簡単に俺は永妻によって高められ、透明の液を零れさせながら勃ちあがる。

 「ふ、はぁ...これぐらいでいいかな」

 そして永妻は屈んでいた身体を起き上げ、俺の腰を跨ぐ。

 「楽しませてね、愛都君」

 「っ、あ...あぁっ、やめ...」

 永妻は俺の勃ちあがったものを掴むとゆっくりと自分の中に包み込むようにしてずぶずぶと腰をおろしてきた。
 熱くうごめく内壁が先端を、裏筋を擦り、先ほどよりも強い快感が支配する。

 「...あぅ、愛都君の気持ちいい、」

 「はっ、準備おーけぃ?...じゃあ、動くよ...」

 その声と同時に突き上げられる俺の身体。そしてその動きは永妻まで伝わり、永妻は高い声を上げる。

 「ひっ...く、う...痛...ぁ、ああっ!」

 「やった、愛都君のいいところ見っけ!」

 突如訪れる前立腺を擦られることによる快感。
楽しそうに笑う綾西はその一点を何度も何度も抉るようにして突き上げてくる。

 「は、あっあ...あっ、」

 後ろからの快感に前からの快感も重なり、頭の中が白く霞む。
 そこにはすでに痛みはなかった。あるのは俺を攻め立てる強烈な快感のみ。

 その気持良さに、俺は声を押さえるのも忘れ喘ぎ続ける。
部屋に響く水音と永妻、そして俺の喘ぐ声。

 そんな中、一瞬叶江のこちらを見る熱い眼差しが視界に入った。
 見られてる...そう思った瞬間...

 「ひっ...あ...ああっ!!」

 「あっ、中に...熱っ、」

 「...く、やばっ...イ、く...」

 俺は永妻の中に射精し、後ろで綾西の昂りを締め付けたことによって後を追うようにして
綾西も俺の中に熱を吐きだした。

 「哀れな犬だね」

 射精した快感の中、そういう叶江の声を耳の奥でとらえた。






prevnext

back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -