最後に笑うのは | ナノ
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 「はっ、あ...っ、穂波(ホナミ)...っ、俺、イキそ...」

 「...うっ、俺、も...っ、日向(ヒナタ)...っ、」

 お互いに、互いの熱い昂りを握り合い激しく上下に擦る。
 荒い呼吸音、卑猥な水音、肉が肉を擦る特有の音。それらが俺の部屋中に響く。

 そしてふと、閉じていた目を開け前を向いた時...

 「くっ...ん、んんっ、」

 日向の熱に浮かされた瞳と目が合い、俺はそれに反応するかのようにして日向の手を熱い白濁で汚した。
 そしてその後を追うかのようにして、日向も自らの白濁で俺の手を汚す。

 「はぁ...はぁ、はっ...やっぱり1人でするより、穂波と抜きっこした方が気持ちいな、」

 「...んっ...俺も日向と扱き合うのはハマる。...はい、ティッシュ」

 「おっ、サンキューサンキュー、」

 ニコリと笑うと日向は俺の手からティッシュを受け取り、手についた白濁を拭き取ると次に自分の萎えたものを拭く。

 「...あ、」

 同じように白濁を拭っていた俺は思わず、そのいつもの光景に目を止めてしまう。

 ―はっ、やっぱ何回見ても...エロく見える。

 日向はいつも俺の白濁を拭って、そして裏返すことも...新しいティッシュに変えることもなくそのまま自分のものを拭う。

 見た目的にはきれいになっているが、見方を変えれば俺の精子が日向のものに塗りつけられたと言っても過言ではない。

 「ん?なした、穂波」

 「い、いや。別に」

 ボーっとその光景を見ていれば不意に声を掛けられ、俺は慌てて始末する手を早める。

 「変な奴ー」と、ケラケラと笑いベルトを閉める日向に恥ずかしさが込み上げ、俺は僅かに顔を赤く染める。

 日向とのこの行為は週に1、2どのペースで行われていた。
 行為のきっかけも特になく、ただノリと若さゆえの好奇心からやり始めた。
 
 だが、このようなことをやり始める仲になって早2年が経った。

 そして同時にそれは俺と日向の親友歴をも表していた。

 日向と知り合ったのは大学1年の春。
同じ学部であり、同じサークルの仲間でもあった俺たち。
 趣味や好みも同じで、しかも背格好も似ていたため、初対面の時もまるでいるはずのない兄弟と話をしているかのような親近感で包まれていた。

 すると、後々日向から聞いた話によると、日向自身も俺と同じことを思っていたらしく“やっぱりな”と俺らは笑いあった。

 そして俺はそんな日向と日常を過ごしていくうちに...自然と日向に対して恋愛感情を抱くようになった。
 元々男が好きなわけでもなく...むしろ偏見さえ持っていたはずなのに...

 気がつけば、好きになっていたのだ。
日向の声が、日向の顔が、日向の性格が、日向の...全てが。

 だが、しかし

 「なぁ、同じ学部の横川って男いるじゃん。あいつ、他校の男とラブホ入っていったらしいぜ」

 「は、ホテル?」

 「そうそう。男同士でラブホ!かぁーーっ、気持ち悪い。一体ナニをやっているんだか。
しかも噂によればその2人付き合ってるとか....。まじ、信じらんねぇよな。男同士で付き合うとか、気狂いのすることじゃん」

 そういって日向は嫌そうに口元をひくつかせる。

 「あぁ、確かに信じらんねぇな」

 そう、日向は前の俺以上に強く同性同士の恋愛に対して偏見をもった男だった。
 そんな日向に“好きだ”なんて間違っても言えない。きっとその瞬間、俺と日向の関係は脆くも崩れ去ってしまうだろうから。

 ―それにこの気持ちを隠し通して、もう1年以上経つ。

 慣れた、といえば語弊があるかもしれないが、実際初めのころに比べて俺は好意を心の奥に押し込めることが簡単にできるようになっていた。

 日向に彼女ができて紹介されても笑っていられた。目の前で彼女とイチャつかれても笑っていられた。朝っぱらから惚気られても、笑っていられた。

 暗い感情は表に出さない。嫌だ、やめろ、別れろ、なんて言葉も吐かずに飲み込む。

 “男”という立場のせいで生まれる格差が悔しくて、どれだけ部屋に籠もって泣いても、日向の前では俺はいつも笑っていた。

 “嫉妬”なんて感情で狂い果てそうになる日常。

 ― 日向と仲良くする奴は皆、殺してやる

 ....そんな考えで頭を覆い尽くされる日々。

 だが、それでも俺は笑っていた。




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