▽ 3※
「あ゛っ、い...痛ッ!!」
「当たり前じゃん。痛くしてるんだから」
ずちゅり、と無理に尻の穴に日向の指を突っ込まれる。
液体も何もつけていないせいで指は中で突っ張り、たった1本だけだったのだが、酷く痛んだ。
「それにしてもきつすぎ。こんなんじゃ入んねぇよ」
するとさすがに日向も諦めたのか、立ち上がり穂波をおいてどこかへと歩いていった。
― 今の、うちに...
いくら愛しい日向だからと言ってもこんな形で体の関係をもちたくはなかった。
穂波は痛む体に無理をして、うつ伏せになり膝を立てると上半身を起き上げさせる。
「逃げる気かよ」
「ぅあ゛ッ!...ぐっ、」
突然背中を蹴られ、不意を突かれた穂波は足は膝立ちのままうつ伏せに倒れる。
「ひっ、ぁ...つめた...ッ、」
そして突きだしているような形になった腎部に何やらぬるつく冷たい液体をかけられた。大量にかけられたそれはとろり、と肌を伝い、床に垂れる。
「これで少しはマシだろ」
「ん゛んっ、う゛...ぅぐっ、」
無遠慮に突っ込まれる指は浅い部分と深い部分を交互に掻きまわす。そのたびに穂波の口からはくぐもった声が漏れ、足の指先はピクピクとヒクついた。
何度かぬるつく液体を足しては中を犯す指の数は増えていく。比例してそれに堪えている穂波の体力は目に見えて疲弊していった。
穂波の性器は痛みで萎え、見るからに快感を一度も感じていないというのはまるわかりだった。
しかし日向は止めようとはせず、ついには4本目の指を入れぐちゅぐちゅと中を引っ掻きまわしてくる。
いつもは“男役”をやっていただけに、自分の前立腺の位置も分からず、少しも快感を拾うことができなかった。
そしてこの後、自分の身に訪れるであろうことを想像すれば、体は面白いくらいにカタカタと震えた。
だが抵抗すれば暴力を振るわれてしまうし、乱暴に行為を進められてしまう。
そうなってしまうぐらいだったら、少しでも苦痛を少なくして事を終わらせてしまいたかった。
― まぁ、一番なのは今すぐこの場から去るということだが...
「ふっ...ぅう゛、くっ...あ、ひな...た...ッ、」
「はっ、本当...信じらんねぇな。お前とこんなことするようになるなんて、な」
そうしてる間にもズル、と全ての指が中から出された。
ヒクつく穴。次にそこに触れたのはすでに勃起し、熱く昂った固い性器。
驚き反射的に腰を引いて前に逃げようとするが、後ろから腰を掴まれ引き寄せられる。
「ぅ、あ゛、あああぁぁっ!!」
その拍子に日向の性器は一気に奥まで突きいれられた。
先程までとは違う、その重量に穂波の口からは悲痛な叫びがあがり、部屋中に響いた。
「ぅ、うくっ...ぁ、ん゛んっ、」
「しめつけ...すごいじゃん。結構時間経つのに、全然緩んでないよ?」
何度か中出しされ、突き挿れられるたびに精子が泡立ち、水音をたてて尻を汚していく。
しかしその間、穂波は一度もイっておらず、律動のたびに萎えた性器が空しく上下に揺れていた。
それでも少しは慣れてきたのか、それに対する痛みはなくなっていた。あるのは内臓がせり上がってくるような気持ち悪さだけ。...―― そうだったのだが、
「んっ、ん、ぁ...あぅッ、あッ、!!」
突然全身に電流が走ったかのような快感が訪れた。
「ん?なに...ここ?」
「あっあ、ぅ...ゃ、やめっ、あ゛あっ...ふッ、」
― 前立腺に触れたということは自分のこの声の変わりようで分かった。
そんな穂波の反応が面白かったのか、ぐいぐいと先端である一点を連続的に突いてきた。
「ひっ、ひな、た...ぁっ、いやだ...そこ、やめっ、」
自分自身の声とは思えない高い声音に思わず鳥肌が立った。だがそんな穂波の反応とは逆に、日向の穂波の中にあるそれは脈打ち、大きくなった。
「お前でも、そんな声...だせるんだ」
そう言い、日向は笑うと、今まで一度も触れていなかった穂波の性器に手を伸ばし、握りこんできた。
それによって一瞬固まる体。仰向けの状態で腰が浮かされているせいで、自然と、握りこまれる自身のものに目がいく。
「こんな...女みたいな声出してさ...ここ、勃ってきてる。なぁ、中...犯されてお前感じてんだ」
「いや、だ...やめろ...ッ!!ぁっ、あ゛あっ、んっ...やめッ、」
そして慣れた動きでその手は穂波のものを上下に扱き、親指は一番敏感な先端の穴を引っ掻いては押しつぶし、中を軽く抉る。
元々、日向と穂波との間では“抜きっこ”という行為自体はしていたため、日向は穂波の弱い部分を熟知していた。
そのせいもあり、あっという間に穂波は高みまで上り詰めさせられる。
そうして、それに比例して日向も限界が近いのか、激しく腰を打ち付けてきた。
前立腺を抉るように、日向の熱く固い性器で擦られ、痛いほどに自身の性器を上下に扱かれ...
「ぅあ、あ゛あっ、ん、ん、い...イク...ッ、ぁっ、ん゛ん...ッ!!」
ついに穂波は腰をビクつかせ、精液を迸らせた。それらは自身の腹や頬を白く汚す。
「...くっ、ぅ...ぁっ、」
その時、後ろの締めつけがきつくなり、ほぼ同時に日向は穂波の中、奥深くに熱いものを打ち付けた。
はぁはぁ、と荒くなった2人の息遣いが部屋の中で繰り返される。
「...んで...なんで、二葉を抱いたんだよ...っ、」
ぽたり、と頬に落ちてくるもの。重たい瞼をゆっくりと開ければ、日向の顔が眼にうつる。
「どうして、二葉を...っ、」
視界は霞んでいて、表情はよく見えなかった。だが、ポタリ、ポタリと止まることなく頬に落ちてくるそれで、今日向はどんな顔をしているのか、なんとなくわかった。
「そんなに、二葉が大事かよ...」
その問いに日向が答えることはない。しかし、もし肯定したものが返されても自分自身、それに堪えられる自身はなかった。
― 大丈夫...日向は肯定してない。まだ、間に合うかもしれない。
たとえ、同性愛者だと差別され嫌われても...それでも、日向を二葉から離すことができれば。
そんな淡い希望が今の穂波の小さな支えだった。
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