その目は、誰を見ているのですか?

少しの笑みをたたえ、グラウンドの端の方へ視線を向けている。
僕は知っている、その視線の先に誰が居るのかを。
でも違うんだ。本当に見ているのはその人じゃ無いことくらい。
「また、円堂さんを見ているんですね」
「うん」
わかりやすい生返事。
本当は円堂さん自身を見てないくせに。風丸さんが見ているのは、彼のもつ輝きでしかない。
そんな円堂さんが可哀想であり、ほんの少しだけ羨ましく感じた。

「風丸さんだって、充分輝けてるのに」

僕の呟きが聞こえたのか、くるりと振り返って僕を見た。
「そんなわけないだろう?宮坂は可笑しなことを言うな」

僕は知っていた。
風丸さんは自分の本当の魅力を自身で理解しながらも、けしてそれを認めないことを。それが風丸さんの処世術だということを。
「僕は、風丸さんがどれだけ凄い人なのか、知っているつもりですよ」
「俺は低俗な人間だよ」
そして僕は、風丸さんが本当はいかなる人にも認められたいと思っていることを。けれどその感情すら認めたく無いことを、知っていた。知ってしまった。
風丸さんは美しく微笑む。いや、微笑んだと言うには堅い。ただ口の端を持ち上げただけの、簡単なものだった。
そこに感情は見えない。

「風丸さんはいつか壊れてしまいそうですね」
「そんなに弱くみえるか?」
「知ってますか、風丸さん?」
硬ければ堅いほど、モノは壊れやすいんですよ。風丸さんは硬すぎるんです、自分に対しても、他人に対しても。

今まで絶やさなかった笑みから、引き締まった顔に戻る。
ああ、いつもの風丸さんだ。
「じゃあな宮坂」
「ええ。お元気で」

こうしてまた僕らは離れていく。






円堂の在り方が好きな風丸と、そんなどうしようもない風丸が好きな宮坂君

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テーマ「人外ファンタジー」
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