「三木ちゃんは甘そうだね」

そう言えば訳が分からないという顔を向けられた。

滝夜叉丸と僕の部屋には、今は僕と三木ヱ門しかいない。
滝は体育委員会の用事があるとかでさっき体育委員長に連れ去られてしまった。

でもなんで三木がいるんだっけ?

「とうとう頭が沸いたか喜八郎。人間なんかが甘いわけ無いだろう。それとも私がチョロい奴だと言いたいのか?」

とうとうだって、失礼しちゃうなー。
ちなみに僕が甘そうだと言ったのは味覚の方での話だ。
そりゃ普通の人間相手にそんなこと思わないけどさ、三木は別なんだよ。

だってだってさ、そのべっこう飴のように透き通った黄金の髪も、真っ赤な夕焼け色の髪も、白く綺麗な肌も。
三木ヱ門を形作るものすべてが、僕にとっては美味しそうなんだもの。


「ねえ、味見してもいい?」

「お前はさっきから何を言ってるんだ?というかお前が分からないところがあると言うから来てやったのに!」

ああそう言えばそんなこと言った気がする。
忘れちゃってたよ。

なんか三木ってばキャンキャン吠えてる犬みたい。
そのうちギンギンになるのかな。それは嫌だなあ。

まだ何か言ってるけど無視して、僕は三木の左手の甲を舐めてみた。
うーん、汗のしょっぱい味がするけど、少しだけ甘いような気もする。
そのまま赤子のように指をちゅうと吸えば、三木の顔が一気に赤く染まる。

とてもウブな反応。可愛い。

「き…喜八郎…、やめろよ」

「やだ。それより三木ちゃん、三木ちゃんはやっぱり甘いんだね」

ゆっくりと三木の首にしがみつく。
真っ白な首筋、凄く美味しそう。
そのままかぷかぷと甘噛みすれば、くすぐったそうに身を捩る。

でもなにか物足りなくて、僕は思いきり噛みついた。

「ーったあ!」

三木ったら耳元で叫ぶんだもの、耳が少し痛くなった。
噛んだところから血がジワリと滲み出る。
その血を舐めてみれば、案の定というか鉄錆の味がする。

けれど不味いとは思わない。

むしろどこか背徳的なこの行為に僕は興奮していた。
するすると身体のラインをなぞる。

「ねえ三木ヱ門。三木ヱ門の全部を食べても良いかな」

その言葉に、さっきまで恥ずかしさからか若干紅潮していた頬が青くなる。

もしかして食物という意味で食べられると思っているのだろうか。
確かに噛みはしたけれど、あんなの子犬がじゃれるようなものだ。

「やだなあ、僕に人肉を食べる趣味は無いよ。ねえ三木ちゃんは衆道って、興味ある?」

しゅるりと腰紐をほどき、無防備なその唇に噛みついた。




味見じゃ済まない





滝早く帰ってこい


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