長かったFFIも終わり、明日はとうとう帰国しなければならない。
ライオコット島で仲間達と過ごす最後の日、監督からは多少羽目を外してもかまわないと言われ、各々が思い思いにすごしているらしい。
マネージャーはこんな機会はめったにないと、色々なエリアで各国のスイーツを食べ歩くらしい。後輩組はみんなへのお土産を買いに行ったし、円堂達はこんな日でも特訓すると言っていた。

かく言う自分は何をするでもなく、ジャパンエリアにある海岸に突っ立って潮風に吹かれていた。

「こんな所にいたのか」

その声に振り返れば、染岡がこちらに歩いてきていた。

「ああ、少し潮風にあたっていくてさ」

染岡が額の汗を適当に拭う。
ユニフォーム姿であるところを見ると、先程まで円堂達と一緒に特訓していたようだ。

「染岡は、特訓していたんじゃないのか?」
「んーああ何となく、な」

そう言って隣に並ぶ。
潮風は相変わらず心地良い。
ふと、ポツリと呟いてみる。

「俺たち、本当に世界一になったんだな」
「そうだな」
「未だに驚いてるよ。陸上部にいた頃は陸上で世界を目指すんだって思ってたのに」
「そういや陸上部だったんだよな」
「そうだぜ。円堂に誘われなかったら、きっとサッカーすること無かっただろうな」
「そういう意味じゃ円堂様々だな」
「あはは大袈裟だな」

ははは、と辺りに笑い声を響かせる。

「だってそうだろ?お前この大会で活躍しまくってたじゃねぇか」
「そんなことないさ。染岡だって何本もシュート決めてたじゃないか。凄かったぜ」
「んな謙遜するもんじゃねーだろ。ま、その言葉は有り難く貰っとくけどよ」

自然と会話が弾む。そういえば、こうして染岡と二人会話するのは初めてかもしれない。
普通の学校生活や、部活中、この大会の時だって、常に他の誰かも一緒に会話をしていた。それでも自然と言葉が出てくるのは、やはり互いにサッカーという共通点があるからこそなのだろう。
そう考えると、何故だかほんの少しだけ寂しく感じた。

「来年も、このメンバーで戦えればいいのに」
「なんだよ、今からもう次のこと考えてんのかよ。気が早えーな」
「だって俺はまた染岡と一緒に戦いたいんだ」
「なっ!おまえ、」

びっくりとした顔をこちらへ向けてくる。その頬が少し色づいていて、思わずクスリと笑う。

「勿論みんなとだって」
「え、いやまぁ、ああ」
「なんだよその薄ーい反応は。染岡だって、また一緒にサッカーしたいって思うだろ?」
「当たり前だろ、んなこと!」
「あ、もしかして期待した?」

ニヤリと笑みを向ければ、思い切り真っ赤になる。その反応がなんだか可愛く見える。
染岡はきっと、良い意味でわかりやすい奴なんだ。

「してるわけねーだろ!んなこと言ってないで、さっさと宿舎に戻るぞ。明日は早いからな」

そう言ってクルリと後ろを向く。

「期待してもいいんだけどなぁ」

その背中に向けてぽつりと呟く。そうしたら、勢いよくこちらに振り向いた。

「…お前それって」
「よし、宿舎まで競争な!勝ったらおかず分けろよ!」

染岡の言葉を遮り、猛ダッシュする。
火照った頬を、冷たい風が撫でる。

「いきなりかよっ、じゃなくてさっきのどういう意味だ!?」
「あははは、教えてほしかったら、俺に勝てよー」
「こんの、待ちやがれ!」

砂浜でいつもより走りづらいけれど、暫くこうしていたいと、そう思えた。









染風はどのカプより青春してる感じがする
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