円←風前提
疲れたんだよ。もう疲れたんだ。誰かを好きでいることが。
こんな一方通行な思いを抱えたって、あいつは振り向いてはくれないんだから。
「何故そんなことを言うんだ」
「嫌に、なっちゃったんだ。もう嫌いでいたほうが楽なんだ」
だから、だから俺のことは嫌いで良いよ。俺も嫌いになるから。けれども今だけは、こうして欲しいんだ。
キュウッと腕に力を込める。
抱き締めた筈なのに、それなのに相手の体温が感じ取れない。不安になってますます力を込める。
「痛い…」
うん。俺も痛い。
でも躰じゃないんだ、胸の奥の熱い処がズキズキと痛いんだ。
「ごめん、なさい。ごめんなさい豪炎寺」
少し痛いけれど、今はこうさせてください。
(そうしないと、壊れてしまう気がしたんだ)