※皆高校生くらい
※風丸がぶっ壊れてる




以前よりも幾らか逞しくなってしまった体つき。
幾ら化粧で顔を覆えども、幾ら服で身体を着飾れども、自分自身は変えられない。男で在るという事実は換えられない。
分かっていながらも尚替わろうとする俺は、きっと頭のネジが外れてしまったんだと思う。

「また、やっているのか」

最近やたらと突っ掛かってくる。豪炎寺。
俺もこいつ位恰好良ければ、モシカシタラ諦メラレタカモ、なんて。

「ああ」
「いい加減諦めたらどうだ」

何度目かの、対話。そして御決まりの返事。
「諦めたら其れで終わりじゃないか。そんなの嫌だろ御前だって」
「そんなことしたって彼奴は振り返りもしないさ」

知ってるよ(そんなことくらい)

自分が一体何れだけ馬鹿なことしてるか何て。
でもそんなこと今更じゃないか。

「彼奴を振り向かせようとしているんなら、普通他の男を誘おうなんてしないさ。そうだろう」

にっこりと、少女の様に可愛らしい笑顔を造る。もう慣れてしまった行為。
ああ、段々と俺は壊れてきてるみたい。こういう事に少しも抵抗感が出なくなってしまった。
そういえば一回だけ、彼奴に此の笑顔を向けたときには、心配そうな顔をされた。酷い話だけれど俺は其れを喜んだ。心配してくれたんだ、俺は愛されてるんだと。
…歪んでる。

「愛が欲しいなら俺のをくれてやる」
「だったらはっきりと言えよ。俺が好きだって」

こいつ、案外分かりやすい奴だから。鈍いって散々言われてきた俺でも分かるなんて余程だ。俺の事が好きだなんてさ。
くすりと嘲るように笑う。
此れは豪炎寺にしか見せない笑い。良かったなぁ好きな子のトクベツで。

鏡を覗く。
其所には仮面の様な化粧を纏った、キモチ悪い男にも女にも成りきれなかった蒼い髪の人間と、男らしくガッシリとした切れ目の白髪の人間。あ、此方を睨んでる。

よくよく見なくても俺の眼は死んでると判る。
こんなでも馬鹿な男共は引っ掛かってくれるんだから、なんて滑稽なんだろう。それともワザと引っ掛かってるのか。自分の欲を晴らすために。思わず笑みを溢す。今度は自嘲するように。

何時もするように高めのヒールを履き、左手には鞄を引っ提げ、静かに扉を開け放つ。
最近習慣になりつつある豪炎寺のお見送りを無言で受け、街へと繰り出す。

「何時までそうしているつもりなんだ」
「俺がオンナノコに生まれ替わるまで、なんて」
「お前は、」

バタンと勢い良く閉まる音で、豪炎寺の発言は遮られる。


そのまま、扉へと背を預け、太陽の眩しさに俯く。

「何でかな?」

何時からこうなった?
覚えている。数ヶ月前、彼奴が、恋愛なんて二の次だった彼奴が、可愛らしい女の子と二人、幸せそうに笑いあっているのを偶々見てしまったから。

ショックだった。
ずっと恋愛沙汰なんか興味無い奴なんだと思っていた。
けれど、そうじゃなかった。

泥だらけの彼奴の顔を拭う可愛い可愛いオンナノコ。
なあ、其処俺のポジションなんだけど。

わかってる。わかってるんだ、自分がどれだけ馬鹿なのか。でも今更戻れない。
もう、何もかも遅いんだよ。

ずっと渇れてしまったと思っていた涙が一筋、頬に流れていった。




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