彼はいつだって僕の予想とは違っていた。
綺麗な容姿とは裏腹に中身はかなり男前で、年中体に傷をつけてくる。まあサッカーやっていれば誰だってそうなるのだけれど。あと、最近知ったことだけれどかなり大雑把だ。普段はキチンとしてるくせに自室だとあまりこだわりを見せないし、お世辞にもあまり綺麗とはいえない。髪だって、少しの崩れなんかじゃ気にしない。僕の中での第一印象ってもう少し女々しかった気がするけれど、今じゃ慣れっこ。寧ろ男前な彼じゃなければ違和感を感じるほどだ。
今だって、きっと彼が座るだろうソファーの真ん中に彼お気に入りのクッションを置いておいたのに、それには見向きもせず何故か僕の隣に腰かける。そしてそのまま、アルバム整理に夢中になっていた僕の方に身体を傾けてきた。正直重い。
「重いです」
「うん」
うんじゃなくて。
「あれだよ、俺からの愛の重さってヤツ」
「そうですか」
そしてこれも最近になって気づいたが、案外彼のノリは軽い。どこぞのプレイボーイみたいな軽さじゃなくて、とっつきやすい軽さ。本当に、彼は僕の予想とは違う。まあそこがいいところなんだけれど。
はらり。今、一本の髪の毛が抜けた。その髪の毛を丁寧に拾い上げる。すると、大きな瞳をこちらに傾けてくる。
「またファイリングってやつ?」
「そうですね」
そっと、その髪の毛を袋へと仕舞う。
「お前の趣味って変わってるよな」
「知ってます」
彼の細く繊細な指先で、先程まで弄っていたアルバムのページを捲る。そこには、沢山の風丸さんの写真。ある時はサッカー中の、ある時は勉強中の、ある時は着替え中の、ある時は読書中の、ある時は、ある時は…。ほとんどの写真はまるで隠し撮りされたような、目線の合わないアングルばかり。
「変態」
「嫌じゃないんでしょう?」
「さあ?」
くすりと微笑をもらす。そういう顔を自然とできる彼が羨ましい。その横顔をもっとよく見たくて、ぐっと顔を近づける。あ、写真撮っておけばよかったかな。もう少しで唇が触れ合うというところで、頬にそっと手を置かれる。
「本当は貴方をファイリングしたいんですけどね」
「それは勘弁だな」
「しませんよ、その時まで」
「その時まで、な」
そう、その時までまだ…。






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